故郷に響け
日比谷野外音楽堂のワンマンライブから2週間後の10月12日、eastern youthはLEO IMAI自主企画ツーマン「大都会ツアー」札幌公演のゲストとしてcube gardenで演奏した。東日本を中心に大きな被害をもたらした台風19号の影響で、当初メンバーとスタッフが搭乗を予定していた飛行機は往路・復路ともに欠航。そのためメンバーは予定を早めて札幌へ前日入りし、帰りは搭乗便を遅くずらした。札幌のライブ当日の天気は曇りだったが、メンバーはライブの前後もずっと台風の影響を案じていた。
札幌でのライブは1年ぶり。静かに開演時間を待つフロアからは、LEO IMAIとeastern youthという、今までありそうでなかった顔合わせへの期待がうかがえた。野音と同じSE、”性解放宣言”が流れるなか、ステージに登場した吉野寿(Vo/Gt)、村岡ゆか(Ba)、田森篤哉(Dr)の3人。1曲目は”ソンゲントジユウ”。そして”街の底”、”夜明けの歌”へ。序盤からクライマックスを思わせる流れでスタートした。
MCでは「第三モッキリセンター」や「金富士」など、前日吉野が訪れたローカルな大衆酒場の店名が出てきて、その度に空気が和む。4曲目の前に吉野はギターアンプの上に置かれていたタコのぬいぐるみを手に取り、マイクに向かってタコを押して鳴らし始めた。「キュピキュピキュピ!」とフロアに響く音。何やらタコと話している風の吉野。半笑いでとまどう観客。「……要するに彼(タコ)が言うに、人間生まれたからには危機一髪!」と言って”男子畢生危機一髪”に入った。吉野曰く『荷物を開けたらタコが入っていた』そうだが、なかなかシュールな光景だった。そこから立て続けに”浮き雲”、”青すぎる空”、”素晴らしい世界”が続く。60分の持ち時間ながら、野音で演奏しなかった曲が意欲的に盛り込まれている。鋭さをはらんだ爆音と叙情豊かに聴かせるパートのコントラストにいっそう引き込まれていく。
このライブに先駆けて、吉野とLEO今井による対談の動画も公開された。
撮影の際に20分くらいとお店に伝えていたのに、結局7時間ほどひたすら吉野は日本酒、LEO今井は赤ワインをオーダーし続け、店員さんから最後の方に『食べ物はよろしかったでしょうか?』と聞かれてしまったという裏話も出た。
「こう見えても私は札幌に6年間住んでいたことがあるんですよ。いい6年でですね、他のどんな時期にも代えることができない6年間でしたよ。青春なんてチープな言葉使いたくないですね」
「忘れない。最後の最後、最後の1秒まで忘れないですよ」
と吉野が語って始まった”テレビ塔”。続く”故郷”。この2曲から想起されるのはやはり吉野が若い頃を過ごした札幌のイメージであり、この地で演奏されるたびに観客に特別な感慨をもたらす。故郷のアウトロからギターを徐々に柔らかく鳴らしながら繋げた”夏の日の午後”がラスト。フロアは盛大に沸くというよりは、笑顔であったり、感極まって泣きそうな顔など観客が様々な表情を見せながらステージを凝視していた。バンドと観客、それぞれの想いと感情が渾然と渦巻きながら音像とぶつかり合う、濃密な時間だった。演奏が終わって沸き上がる拍手のなか、吉野はタコのぬいぐるみをマイクに向かってもうひと押ししてステージを後にした。
8月末から各地でゲストを迎えて開催されたLEO IMAIの「大都会ツアー」はこの日が地方公演のラスト。10月25日(金)の東京マイナビBLITZ赤坂での最終日(共演:ZAZEN BOYS、ゲスト:前野健太&呂布カルマ)を残すのみとなっている。この日、LEO IMAIは7月に発売したカヴァーEP『6 Japanese Covers』よりZAZEN BOYSの”ポテトサラダ”、eastern youthの”夏の日の午後”、LEO IMAIの最新曲”Fandom”、人間椅子の”どだればち”を続けて演奏。中盤のハイライトとなった。
“夏の日の午後”はリズムが大胆にアレンジされ、終盤にはLEO今井のシャウトが突き刺さり、バンドのグルーヴもうねりを増す。強靭なヘヴィネスとカオスがみなぎるカヴァーに度肝を抜かれた。その演奏を2階席から観ていたeastern youthのメンバー。LEO今井もMCで「高校生の頃から本当に大好きなバンドなので、一緒に同じステージで演れているのは夢のようでございます。奇跡のようでございます。本当にありがとうございます!」とeastern youthへリスペクトを向けていた。
<SET LIST>
01.ソンゲントジユウ
02.街の底
03.夜明けの歌
04.男子畢生危機一髪
05.浮き雲
06.青すぎる空
07.素晴らしい世界
08.テレビ塔
09.故郷
10.夏の日の午後
<極東最前線 〜にゅーでいらいじんぐ2019〜 >
2019年 12月8日(日) 渋谷クラブクアトロ
GUEST: NITRODAY
開場 17:00 / 開演 18:00
前売:¥4,000円(前売/ドリンク代別)
詳細:https://smash-jpn.com/live/?id=3261
一般発売:10/19(土)
チケットぴあ(P:163-986)/ ローソンチケット(L:73487)/
e+(Pre:10/12-14・QUATTRO Web:10/12-14)/ 岩盤(ganban.net)/ 会場
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