ザ50回転ズ | 東京 渋谷 CLUB QUATTRO | 2019.10.27

毎度! おおきに! 提灯揺れるフロア

ザ50回転ズの単独ツアー「MAIDO OHKINI!ロックに恋して15周年」の東京編である。渋谷クラブクアトロはハロウィンの喧騒とは違う熱気が始まる前からあった。ステージやフロアには「ザ50回転ズ」と今回のツアータイトルが記してある提灯が飾られていて、50回転ズらしい演出であった。

16時スタートという普段のライヴと比べると早いスタート。

いつものようにドクター・フィールグッドの“Riot in Cell Block Number 9”で入場し、まずは「50回転ズのテーマ」から始まった。続く「マブいあの娘」「たばこの唄」と演奏されると初期のライヴではこんな選曲がよくあったなと懐かしさを感じさせる。

「(曲をアイドルに提供するのは)自分の子をお嫁にだすようなもの。だけど、そのアイドルが解散してしまって、(子どもが)帰ってきてしまった」とダニーが笑わせてから「キスミーダーリン」を演奏する。こうしてダニーの声で改めて「キスミーダーリン」を聴くと50回転ズ節そのもので、女の子が歌っていた感じがないのがすごい。一転して冤罪を歌う「無実の男」。ビターかつタイトで攻撃的なロックである。ボギーが歌う「夜明けに走れ」、ポップな「アイ・ワナ・ビー」とバラエティ豊富で攻めてくる。ハードな「ゴキブリ讃歌」、ドリーが歌う「放課後のロックンロール」がフロアを揺らす。

ここでダニーがアコースティックギター、ドリーがウッドベースに持ち替えてアコースティックセットへ。軽くセッションしてから、毎回ご当地ソングをカヴァーするコーナーで、ロス・プリモスの「ラブユー東京」を演奏した。我々の世代には「オレたちひょうきん族」の「ラブユー貧乏」で有名な曲であった。この曲を聴くと明石家さんまやMr.オクレや村上ショージの顔が反射的に浮かんでしまう。ダニーにとって「ひょうきん族」は世代ではないそうで、単にご当地の「東京」がタイトルや歌詞に入っているからの選曲だそうだ。このツアーでは各地のライヴでご当地ソングを歌っているので、リハーサルが大変とのこと。「8割がムード歌謡、2割がど演歌」。地名が歌詞にでてきてようやくお客さんたちが盛り上がるようだ。

アコースティックセットは続き、「酔いどれマーチ」はケルティック(アイリッシュ)パンク感がよくでていた。この曲も北海道日本ハムファイターズのチャンステーマとして、むしろ野球場でよく聴く。「長年やっていてヒット曲が一曲だけありました」と「ゲゲゲの鬼太郎」を怪しい成分を含ませながら演奏し、「故郷の海よ」でカントリーでフォークなバラードが染み渡る。

エレクトリックギター/ベースに持ち替えて「I can not be a good boy」から後半戦に突入する。「Vinyl Change The World」や「おさらばブギウギ」の定番もあるけど、この日は「YOUNGERS ON THE ROAD」や「Thank you for RAMONES」がない久しぶりの曲が多い印象だった。今回のツアーにあたってリクエストを募ったので、こうした新鮮なセットリストができたのだ。東京ではポップで疾走感がある曲がリクエストされることが多いと感じる。定番曲がなくても、いつでも楽しめる50回転ズのブランドができ上がっている。これが彼らが15年やってきた積み重ねなんだろう。

終盤、ケルティック(アイリッシュ)パンクを感じさせる、かなり久しぶりな「船乗りたちのメロディ」を経て、いつもの締めの「おさらばブギウギ」では、お客さんたちも心得てコール&レスポンスもバッチリと決まる。そしてラストにはバズーカが発射されて会場を銀テープが舞った。

熱烈なアンコールの声がすぐに上がって、バンドがステージに戻ってくる。中年男へ向けた叱咤激励の歌「あの日の空から」、そして定番「ロックンロール・マジック」。フロアを盛り上げてステージを去る。心得ている人たちはフロアから動かずにさらなるアンコールを求める。しばらくして戻ってきたバンドは「デヴィッド・ボウイをきどって」を荒々しく演奏する。それもまた新鮮でこの曲の魅力を引きだしていた。そして「ぼちぼち帰ろ」。のんびりとした懐かしい歌で、昔のバラエティ番組のエンドロールを観ている気にさせてくれる。2時間に渡るライヴにふさわしいエンディングになったのだ。

セットリスト

50回転ズのテーマ
マブいあの娘
たばこの唄
荒野の男
キスミーダーリン
無実の男
夜明けに走れ
アイ・ワナ・ビー
ゴキブリ讃歌
放課後のロックンロール
ラブユー東京
酔いどれマーチ
ゲゲゲの鬼太郎
香港ブーガルー
故郷の海よ
I can not be a good boy
夢見るタイムトラベラー
おねがいR・A・D・I・O
ロックンロール・フォーエバー!
WE ARE THE KIDS
Vinyl Change The World
船乗りたちのメロディ
おさらばブギウギ

アンコール

あの日の空から
ロックンロール・マジック

デヴィッド・ボウイをきどって
ぼちぼち帰ろ

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Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Yoshihito Koba