KING BROTHERS | EVIS ROCK FESTIVAL at 兵庫県立芸術文化センター | 2019.12.28

ロックンロールの名のもとに

「西宮で1998年から20年ロックンロールやってます、キングブラザーズです、よろしくお願いします、マーヤギター!」ケイゾウ(Vo/G)は1曲目で自分たちを、20年来の相棒をそう紹介した。2001年のメジャーデビューアルバム、通称「虹盤」の2曲目を飾る”あッ!!ああ”のスケール感のあるイントロで、ホールの空気はガラリと変わった。待ちわびた観客がステージ前に集まる。「ここから遠すぎて後には戻れない」とケイゾウとマーヤ(G/スクリーム)は歌った。ゆっくりとしたテンポだからこそ彼らの決意が胸に突き刺さる。

暮れも押し詰まった12月28日(土)、地元西宮にある兵庫県立芸術文化センター内の神戸女学院小ホールにて、今回で5回目となる「EVIS ROCK FESTIVAL!! 2019が開催された客席が舞台を取り囲むすり鉢型のホールは、普段ジャズや小編成の公演を上演している場所で、ロックバンドがそのステージに立つのはこれが初めてだという。11時前から始まったサウンドチェックでは、慎重に音作りが進められていた。八角形のステージの中央に置かれたゾニー(Dr)のドラムセットが、ホールの柔らかな曲面形状の壁と天井にとてもよく映えた。

15時にスタートしたイベントは、ギター1本で静かに熱情を歌い上げる蠣崎未来から始まり、フィドルやバンジョーで心踊らせたリーテソンバンド、ピアノに向かい女の業を淡々と歌う葉山久瑠実と続いた。ステージを照らすスポットライトの光は客席には届かない。暗闇だからこそ、観客は音に集中出来た。

ステージの上には絶対に上がらないように、という厳重な警告が司会者から念押しされた後、バンドが紹介された。ライブハウスではおきまりのSEは流れなかった。暗転したホールの静寂の中、メンバーがステージに登場すると、冒頭に記したように1曲目”あッ!!ああ”からライブは始まった。

2曲目の”BIg Boss”でバンドは手加減なしの爆音を鳴らした。サウンドチェックで立っていたドラムマイクが本番では立っておらず、 ゾニーはあらゆるものをなぎ倒す勢いで腕を振り上げては振り下ろし、凄まじいパワーで生音を鳴らしていた。ケイゾウは念を込めるかのように歌い、その想いを解き放し続けた。いまだかつて聞いたことのない音が鳴っていた。ロックンロールバンドが演奏されることを想定されていない場所で、ロックンロールが容赦無く鳴り渡っていた。

マーヤが両手中指を立て「Are you ready?」と投げかけると、ケイゾウが「Boogie!」とシャウトし、そのまま”King of Boogie”へと雪崩れ込んだ。マーヤとケイゾウはステージぎりぎりを右へ左へ動きながらプレイしてみせた。メンバー紹介をしたあとケイゾウは「好きな感じで楽しんでいってください」と客席に告げ、照明を明るくするようスタッフに指示すると客席へと突入していった。「踊れる人、もっと近くで、いつもより音量小さめですよ」とマーヤが客席へ呼びかけるとゾニーの轟音はうねりをあげながら加速していく。小さな子供連れの観客や、ロックバンドの音に不慣れな観客はライブが始まると席を離れたのだけど、一方では着席したまま食い入るように笑顔をこぼす観客も多く見られた。会場の外にはモニターが設置され、子供をあやしながらじっと画面越しにライブを楽しむ観客の姿もあった。ステージに戻ったケイゾウは「くれぐれも怪我と、この会場を汚さないようによろしくお願いします」と笑って見せた。制約の中、観客をどれだけ楽しませられるのか、そんなバンドの想いがステージを通してひしひしと感じ取られた。

ライブはノンストップで続いていく。降り注がれる憂いを帯びたギターの音が、例えようのない美さをたたえていた”69”。ゾニーが放つ生音がホールを支配していた”Do Do Scratch”。客席に轟き渡るサウンドは、ステージから客席へ全方向へ押し出され、観客は音塊に飲み込まれる感覚で、この場所だからこそ味わえた音色に終始圧倒された。

「キングブラザーズの最も極悪なナンバー、ルル」ケイゾウの声が引き金となり、フロアは一気に湧き上がった。観客の期待の眼差しがマーヤに注がれると、彼はギターを肩から下ろしマイクに向かった。「誰一人ステージに上がってこなかった。ありがとう。ロックンロールの名のもとに、全員ここに集まってくれ。そしてここ(ステージ)には立つな!」そう言うやいなや、スタッフの制止を振り切り、ステージ前方に集めた観客に自ら飛び込んだ。

マイクを咥えながら全身全霊で歌う”GET AWAY”で、マーヤは何度も中指を立てた。マーヤの立てる中指はロックンロールの道標であって墓標なんかではない。いつだって先駆者というものは、壁をぶっ壊しながら後続者の為に道を作るものだ。笑みをたたえながら最後に彼はこう言った。「ここに乗らないでいてくれてありがとうロックンローラー、頑張ったね。だから好きなんだ西宮、I love you Rock’n Roll!」

10代、ケイゾウに誘われたマーヤは、西宮北口の交差点で魂を売り飛ばしキングブラザーズに加入した。この日「EVIS ROCK FESTIVAL!! 2019が行われた兵庫県立芸術文化センターは、その交差点に立っている。

<SET LIST>
01.あッ!!ああ
02.Big Boss
03.King of Boogie
04.69
05.Do Do Scratch
06.GET AWAY
07.ルル

▼『Rock ‘n’ Roll INVASION』沖縄編
with KiNGONS & 忘れてモーテルズ

2020年
1/10(金) 那覇 @G-shelter w/ HARAHELLS (from 那覇)
1/11(土) 北谷 @アメリカンビレッジ【カーニバルパーク ミハマ前広場】★野外フリーライブ
【入場無料】(14:30~17:30)
1/12(日) コザ @騒音舎 w/ HELL型 (from コザ)
1/13(月) 那覇 @ファンファーレ ★スリーマン
18:30 open 19:00 start
KING BROS WEB 最速先行チケット 3200円】
【スペシャル特典付き三日間通し券 9000円】

通常一般前売 & メール予約 3500円、当日4000円(全て1Dr別)


▼『Rock ‘n’ Roll INVASION』
~ ヴァレンタイン・スペシャル
キングブラザーズ、KiNGONS 、忘れてモーテルズ 、HELL型、HARAHELLS (全公演共通)

2020年
2/14 (金) @神戸バリット

2/15 (土) @町田SDR
2/16 (日) @宇都宮STUDIO KENT
18:30 open 19:00 start
KING BROS WEB 最速先行チケット 3300円】
【スペシャル特典付き三日間通し券 10000円】

通常一般前売 & メール予約 3800円、当日4300円(全て1Dr別)

 

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Text by Tomoko Okabe
Photo by Tomoko Okabe