KING BROTHERS | Streaming+ at 大阪 難波メレ | 2020.05.30

ライブ、その真っ只中へ

新型コロナウィルス禍を受け、自粛を余儀なくされたキングブラザーズが5月30日(土)20時から、難波メレにて視聴チケット制のストリーミング・サービスStreaming+で初ライブ生配信を行った。19時40分には『FUCK THE COVID!』という文字が画面に表示され、カウントダウンが始まった。

前置きもなく、爆音と共に“スパイボーイズ”でライブはスタートした。フロアに機材が降ろされた状態での演奏だ。撮影はライブ配信でよく見かける固定カメラによるものではなく、メンバーそれぞれにカメラマンが張り付いて行われていた。メンバーの動きを追随する視点により、あたかも自分が最前列にいるかのような現実味があった。

「ロックンロールで無敵になりましょう」とカメラ目線で叫んだケイゾウがギリギリまでカメラに寄っていく。「ロックンロールが聞こえますか? もう少しや、頑張れ!」とマーヤがシャウトしながらレンズの前に中指を立てると、その迫り来る臨場感に度肝を抜かれた。画面から放たれる熱量はいつものキングブラザーズと全く変わらない。ライブと同様、配信であっても一瞬足りとも目が離せないのだ。

いまにも自分の元にマーヤが飛び込んでくるかのような錯覚に陥ったかと思えば、ゾニーの手元でスティックの赤い削り粉が飛び散る生々しさにハッと息をのむ。映像のリアルさに脳が混乱する中、ケイゾウは煽りがなり立て、突き進むバンドを牽引していった。

実際のライブ同様ノンストップで演奏は続いていく。パンデミックという未曾有の事態に陥りその活動を制限された今、バンドの不屈の意思をのせながら“69”,“BIG BOSS”でバンドの熱量は最高潮に達する。あの上昇していくフロアの温度も、空気を震わすシンバルの音も、アンプからジャンプする二人のギターリストを見上げる視界も、次第に観ているこちらの体温が上がるような生々しい体感と共にあった。

“GET AWAY”で体をくの字に曲げながらマーヤはギターをかき鳴らす。「I Love You」とカメラ目線で繰り返し叫ぶ。その思いは、カメラの先にいる全ての視聴者に向けられている。“マッハクラブ”で彼は「ロックンロールのパワーを信じろ、二・シ・ノ・ミ・ヤ!」と叫び、フロアに転がりながらスクリームし続けた。それは、あたかもそこに受け止める観客の姿があるかのような咆哮だった。

キングブラザーズが見せてくれた配信は、バンドと視聴者が繋がるという単純なものではなかった。無観客であっても他の追随を許さない圧倒的なライブを見せつけ、視聴者をそのライブハウスのただ中へ引きずり込んだ。ロックンロールバンドが今を燃やし尽くしながら突き進む様は、難波メレのブルーの壁と相まって胸に迫る美しさだった。

6月9日(ロックンロールの日)には、この日の配信にアンコール曲を追加した特別編集版が海外へ向け再び配信される予定(国内でも視聴可能との事)。また、オープンリールを駆使し、アナログレコーディングにこだわった、THE BLACK CINEMAとのスプリット7インチアナログ盤『CRAYON SPLIT COLLECTION VOL.1』のリリースも6月20日に決定している。新型コロナウィルス禍からそれ以降、彼らの活動にますます期待したい。

今後のライブ予定詳細はキングブラザーズ オフィシャルサイトにてご確認ください。

<SET LIST>
01.スパイ・ボーイズ
02.★★★
03.魂を売り飛ばせ!
04.BIG BEAT
05.69
06.Big Boss
07.GET AWAY
08.マッハクラブ

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Text by Tomoko Okabe
Photo by Tomoko Okabe