eastern youth | 宮城 ARABAKI ROCK FEST.18 | 2018.04.28

一人のためだけに歌われる、パンク・ロック

4月28日、ARABAKI ROCK FEST.18に出演したeastern youth。近年、同フェスでは昼間の時間帯の出演が続いていたが、今回は収容人数3000名のARAHABAKIステージの1日目のトリとして登場した。

昼間は快晴で暑かったが、日没後は一気に気温が下がった。村岡ゆか(Ba)加入後、ARABAKI ROCK FEST.に出演するのは3回目。最新アルバム『SONGentoJIYU』のリリースとツアーを経て、一層生き生きと、豊かに響くアンサンブルで魅せる。1曲目「ソンゲントジユウ」を演奏したところで吉野は熱演のあまり暑くなったのか、着ていたセーターを脱ぎ、観客から歓声が上がる。

いつものとおり吉野は、フェスやライブでの集団での盛り上がりに対する違和感を述べていた。「一人のためだけに歌う」と言って、「明けない夜はないのだ」へ入る。ARABAKI ROCK FEST.の観客にも最新型のeastern youthを示していく。

曲間、吉野が鳴らすギターは抑揚に富み、ドラマチックだ。「踵鳴る」のイントロへ切り込むと、怒号のような歓声が返ってくる。吉野は何度もギターを振り下ろし、熱のこもった身振り、渾身の歌で応える。村岡ゆか(Ba)と田森篤哉(Dr)による疾走感に満ちたリズムに、吉野の長いシャウトが乗り、一気に駆け抜けるラストは圧巻だった。

終われば大歓声。観客から「30周年おめでとう!」の声が飛ぶ。吉野は「めでとうない。年取ってくると、誕生日なんかめでたくもない。『30年も、うだつの上がらない奴だな』って思われているような、わびしい気持ちもありますよ」と返すが、観客はおかまいなしで、声援は次々にかかる。吉野は照れがあるのか、「こっちなんか見てないで、いい月ですよ」と空を指差してみたりする。その指先、観客の後方高くには、満月に近い月が見えた。

後半も「矯正視力〇・六」、「夜明けの歌」と代表曲が続く。ひんやりとした空気の中、自然あふれる野外ステージで聴く、ダイナミックな演奏は格別だ。「夜明けの歌」はアウトロが終わらないうちに拍手が沸き起こった。

「そして俺たち、また街の底で会おうぜ!」

「街の底」の間奏で、吉野はギターを弾きながらステージ中央の花道を半ばまで進み、跪く。観客の歓声は吉野の一歩ごとに大きくなった。立ち上がって両腕を広げる吉野を、大歓声が包んだ。

「街の底」が終わった後も、アンコールを求める拍手が鳴り止まない。ふたたびステージに3人が登場。吉野が同日、同じステージに出演していた亜無亜危異(アナーキー)のライブを観た感慨を語る。

「バスで(会場に)着いたときにさ、『俺たちは大量生産の缶詰と違うぜ』って聞こえてきたのさ。小学校の時に思いましたよ。『俺たちは大量生産の缶詰なんかじゃねえんだ、よーく言ってくれた!』と思って、俺はそれからずっとずっとパンク・ロックを信望してきました」

「俺、初めてですよ、(アナーキーを)観たの。いやー、感動した。よかった。ああいうこと言ってくれて、本当に俺は助かりましたよ。ひとりぼっちだったからよ。ああ、わかってくれる人いるんだなあって、思いましたけどね。楽屋でさっき(アナーキーのメンバーに)会ったとき、『そんなこと言ったっけ?』みたいな顔してましたけどね」

「パンク・ロックが好きですよ。『中途ハンパな気持ちじゃなくて。やさしいから好き』……なわけじゃない」とTHE BLUE HEARTSの「パンク・ロック」の歌詞を引用して、観客が沸く。

そして、eastern youthは「夏の日の午後」で己自身のパンク・ロックを鳴らした。拳を突き上げる人、熱い眼差しでステージを見つめる人、バンドと一緒にコーラスする人。ARAHABAKIステージにはたくさんの観客が集っていたが、一人ひとりがeastern youthの歌を、まるで自分ひとりのためだけに歌われているかのように、受け止める。夜空に輝く月の下、その光景は壮観だった。

<SET LIST>
01.ソンゲントジユウ
02.明けない夜はないのだ
03.踵鳴る
04.矯正視力〇・六
05.夜明けの歌
06.街の底

En. 夏の日の午後

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Text by Keiko Hirakawa
Photo by Keiko Hirakawa