2025ジャパンツアーファイナル・ライブレポート
キングブラザーズの地元、メンバーも足繁く通う西宮のとある町中華屋は、特級調理師による本格中華が味わえる良店である。青椒肉絲も名物のひとつ。一般的に、青椒肉絲には豚肉か牛肉が使われる。どちらもそれぞれの旨味を持つが、その美味しさを支えているのはピーマンとタケノコの食感があればこそで、異なる要素が混じり合い調和することこそこの料理の真髄なのだ。…何を冒頭から、と思われるかもしれない。だが、あえて言いたい。「キングブラザーズこそ青椒肉絲なのでは?」と。
4月4日、東京・The Top Beat Clubから始まったキングブラザーズのツアーは、北は北海道、南は奄美大島、沖縄まで、全国津々浦々を駆け抜けた。そして11月2日、29本目にしてツアーファイナルを迎えたのが大阪・難波メレ。彼らのホームグラウンドとも言える関西の地だ。ステージにメンバーが登場するとなんとマーヤ(Gt & Scream)はツアーポスターに描かれたまんま、鎖付きの口輪をして現れた。ゲンキ(Dr.)の乱れ打ちがフロアに火をつける。マーヤとケイゾウ(Vo/Gt)の金属的なギターが突き刺さると、会場中のボルテージが一気に跳ね上がった。

“スパイボーイズ”でマーヤが「今日は最終日だぜ!」と叫ぶや否や、マイクをフロアへ投げ込む。観客の咆哮がリレーのように受け渡され、ケイゾウが「うつむかず前を見ろ お前にもできるだろ?」と二度繰り返して歌った。 続く“魂を売り飛ばせ”、“Paint it Black”では、奇をてらわずも強靭なグルーヴを刻むゲンキのビートが、マーヤのハイトーンギターと絶妙に絡み合う。そこにケイゾウのダークなベースギターが重なり、音像を真っ黒に塗りつぶしていく。
“キング・オブ・ブギー”のイントロで観客から歓声が上がる。ピッチを落としたドラムに切り込んでいくマーヤのギターと低くうねるケイゾウのソロ・・・ブルースの香りをまとった流れは、腰の底から熱を呼び覚ます。 ゲンキのビートが徐々にピッチを上げ、四方にブギーを叩き鳴らすたびに、フロアの熱気もまた高まっていく。
“Big Boss”の疾走感、“ルル”では満を辞してマーヤがフロアへ飛び込み、後方やバーカウンター付近の観客までも巻き込んでいく。“×××××”“KILL YOUR IDOL”とフロアを高揚させたまま、今ツアーでお披露目された新曲“裸になれ!”ではミドルテンポのダンサブルなリズムが観客を踊らせた。ドカドカ鳴らすゲンキのビートが耳印となる“1979”へ。熱気に包まれたまま、観客それぞれが思い思いに踊っていた。
そこへ、重みを削ぎ落としたゲンキのドラムと、寄り添うように繰り返されるケイゾウのギターが印象的な“空っぽ”が始まる。絶望の先に見える一筋の光に希望を見出すような世界観が胸を打つ、アルバム『13』からの1曲だ。『13』はデビュー後初めて歌詞カードが付いてきたアルバムで、それまでの圧倒的な破壊力を持って怒りの限りを放ちながら突き進んできた彼らが、歌を聞かせるアルバムを作ったことに当時は度肝を抜かれた。その中でも“空っぽ”は、同アルバムからセットリストに度々組み込まれることもある“メッセージ”と同じく、焦燥と希望を併せ持つ楽曲である。ケイゾウの低い声がフロアの集中を一気に引き寄せ、乾いたドラムがリリックの質感と見事に呼応し、熱と静けさが混ざり合うアレンジが今のキングブラザーズを象徴していた。
途中、アンプトラブルによる間合いに“質問コーナー”が挟まれた。 ギターを始めたのはいつ?との問いにケイゾウは「中学生の頃。弾けないのにギターケースを抱えて街を歩いてた」と笑う。二人が出会ったきっかけは?との問いにはマーヤが「高校の先輩後輩で、卒業してからマスクを被って止まらないドラムを叩いてたら、“あなたいいですね”って声かけてきたのがケイゾウ」と笑った(キングブラザーズの初期Drはマーヤ)。彼らの出会いが、今の轟音の原点なのだ。
ケイゾウとマーヤという双璧と共に歩んできた、ゲンキを含むドラマー達に想いを馳せる。それぞれの個性がキングブラザーズという料理の“味わい”を深めていく。 そう思ったとき、冒頭の話が腑に落ちた。まず ピーマンとタケノコがあって、そこへ肉が加わることですべてが主役となり、互いに引き立て合う。 キングブラザーズとは、まさにそんなバンドだ。だから私は改めて言いたい。青椒肉絲ってキングブラザーズなのでは?と。
<SET LIST>
1.スパイボーイズ
2.魂を売り飛ばせ!!
3.☆☆☆☆
4.Paint It Black!
5.キング・オブ・ブギー
6.Doo Doo Scratch
7.UFO
8.Big Boss
9.ルル
10.××××
11.KILL YOUR IDOL
12.裸になれ!
13.1979
14.空っぽ
15.クール誕生
16.GET AWAY
17.マッハクラブ
EN1.スーパーX
EN2.★★★
<ライブ情報>
■2025年 11月15日(土) 東京・新宿シネマシティ広場『PSYCHIC FES 2025』
新宿歌舞伎町6会場 OPEN/START 11:00/12:00
*キングブラザーズは13時、シネマシティ広場のオープニングに登場!
■2025年 11月16日(日) 東京・下北沢CLUB251
OPEN/START 18:30/19:00
■2025年 11月23日(日) 大阪・心斎橋パンゲア『The Chats JAPAN TOUR 2025』
OPEN/START 17:30/8:00
■2025年 12月5日(金) 東京・大塚Hearts+
OPEN/START 18:00/18:30
■2025年 12月6日(土) 東京・下北沢『下北沢にて’25』
OPEN/START 11:30(予定)/12:00(予定)
■2025年 12月7日(日) 静岡・浜松グラインドハウス
OPEN/START 16:3017:00
■2026年 2月10日(火) 大阪・難波メレ『難波Mele15周年特別企画 Special Two-Man Show』
vs POLYSICS
OPEN/START 18:45/19:30
詳細はオフィシャルサイトをご確認ください。
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