eastern youth | 鹿児島 WALK INN FES! 2019 | 2019.05.18

せまる夕闇のなかで

5月18日、eastern youthが鹿児島県の桜島で開催されたロックフェスティバル、WALK INN FES! 1日目に出演した。この日は朝から天気が悪く、桜島の山影は雲の向こうだった。午後は風雨が強まった時間帯もあったが、eastern youthの出番の18時半すぎには、小雨に変わっていた。

eastern youthはJET STAGE1日目のヘッドライナーとして登場。演奏開始時刻25分前、サウンドチェックのためにステージに上がった吉野寿(Gt/Vo)が、ステージ前でライブの開始を待っていた10人ほどの観客へ「これくらいの人数でやりたいね」と笑顔を向けると、観客から笑いが返ってきた。地元の人たちが協力しあって作り上げているフェスならではの、和やかな空気だ。

開演直前には続々と観客がステージ前に集まってくる。サウンドチェックを終えた吉野が「いま何時?」とスタッフに聞くと、観客が定刻までのラスト数秒をカウントダウン。「ゼロ!」の声とともに1曲目、”夏の日の午後”がのイントロが始まる。同時に大きな歓声が沸きあがった。

初めて出演するフェスにもかかわらず、1曲目から大いに盛り上がった。吉野と村岡ゆか(Ba)、田森篤哉(Dr)の演奏も、凄まじい気迫とともに冴え渡っている。演奏の迫力にたまらなくなったのか、クラウドサーファーがひとり現れる。すると何人かが続く。フェスではよくある光景だ。2曲目の”砂塵の彼方へ”を演奏し終えた吉野は、クラウドサーファーへ向けて語る。

「前列にさ、小さな女の方もおられますよ。全員が頭ぶつけられて嬉しいわけじゃないからね。だからやめてくんねえ? 俺たちのときだけは。他のバンドでやるのはいいけど」

毅然と「お願いします」と言い、”青すぎる空”に入る。初めて観た人は驚いたかもしれない。最前列付近にいて、内心ホッとした人もいただろう。eastern youthは2000年代前半から「クラウドサーフィンはしないでほしい」とステージで観客へ伝えてきた。昨年掲載したインタビューでも、吉野は同様の発言をしている。

クラウドサーフィンが起こらなくなったかわりに、“青すぎる空”、”ソンゲントジユウ”は吉野のスタンスを支持するように、今まで以上にバンドと一緒に歌い、飛び跳ね、拳を上げて演奏に応える観客が前方に多く見えた。後方には足元が大きな水たまりと泥でぬかるむなか、じっくりステージに見入る沢山の人たちがいた。

「持ち時間は35分しかないので、何も言いません」

吉野はそう語り、“夜明けの歌”から”街の底”で締める。このころには日も暮れ、せまる夕闇をバックにステージの照明がいっそう映えるようになった。”街の底”の間奏で両腕を広げてみせる吉野を、大歓声が包む。雨が降っていても、野外でこの時間帯に観るeastern youthは格別だ。これも20年前、夕暮れの時間帯にフジロック・フェスティバルに初出演したときから全く変わっていない。きっと9月28日(土)に開催が決定している、日比谷野外大音楽堂での17年ぶりのワンマンライブも同様に素晴らしいだろう。

35分の持ち時間であっても、長年貫き通してきた姿勢と持ち味をしっかり示したeastern youth。久しぶりの鹿児島での演奏は、記憶に刻まれる時間となった。

<SET LIST>
01.夏の日の午後
02.砂塵の彼方へ
03.青すぎる空
04.ソンゲントジユウ
05.夜明けの歌
06.街の底


<eastern youth 日比谷野外大音楽堂公演 開催概要>
2019年 9月28日(土) 日比谷野外大音楽堂
開場 16:45 / 開演 17:30
※雨天決行・荒天中止
前売:¥4,500(全席指定) / ペアチケット:¥8,000(全席指定)
※未就学児童は保護者同伴に限り入場可(小学生以上はチケット必要)
※未就学児童でも座席が必要な場合はチケットが必要です。
詳細: https://smash-jpn.com/live/?id=3150


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Text by Keiko Hirakawa
Photo by Keiko Hirakawa