映画『オアシス:ネブワース 1996』を観て

キャリア絶頂期の「オアシス」を追体験せよ

1996年当時、僕は大学2年生だった。当時はまだインターネットの普及率も低く、主な洋楽の情報源は『ロッキング・オン』と『NME』、『BEAT UK』(深夜テレビ番組)、外国の人とコネクションがある友達、あとは地元のCD・レコード屋の店員さんぐらいだった。

そんなある日、音楽友達からオアシスがネブワースで超大規模なライブを行うことを聞いた。「オアシスが屋外で数十万人規模ののライブやるんだってよ!」「マジ!?それもはやフェスレベルじゃんか!」もうそれはワクワクするしかない緊急事態だった。

当然観に行きたかったが、しかしそんな思いとは裏腹に現実は厳しかった。当時バイト代はCDやレコードの購入費だったり、ライブのチケット代、学費や生活費などに消えてったので、海外旅行なんて到底無理だった。加えて、当時、情報は各種メディアから断片的にしか得られなかったので、ライブの全体像を理解することすらままならず、無性に悔しい思いをしたのを今も忘れない。

そこから25年。そのネブワース公演が映画化されると知り、歓喜したのは言うまでもない。それはきっと僕だけじゃないだろう。遂に、あの伝説のライブを観ることができるのだからわけもない。(ちなみに、筆者は公開前日あまりに楽しみすぎて、逆にナーバスモードに入ってしまった(苦笑))

当時のファンのライブ体験を再現する構成

映画は、当時のライブを追体験できる構成になっており、ネブワースのチケット発売からライブ終了までを時間軸で追っていく形で描かれていた。

イギリス全人口の2%におよぶ約250万人が申し込んだと言われている空前のチケット争奪戦。ディープなオアシスファンから興味を抱き始めたばかりの一般層までを巻き込んだその現象。歴史的ライブの体験者となるため、皆がチケットを手に入れようと奔走していた。電話のリダイヤルをしまくるファン、チケットセンターに徹夜で並ぶファン、地元レコード屋の店員のつてのつてを使って購入するファンなど、チケットをゲットするまでのストーリーが既に胸熱すぎた。

ライブのパートに入ってからも、要所要所でファンのインタビューや回想が差し込まれていた。会場にいるファンは会場内の熱狂っぷりを口にし、家からラジオで聞いている学生は会場へ行けないもどかしさと抑えきれない興奮を隠すことなく話していた。

それぞれの立場から語られるネブワースのライブ。当時、まだ向こう見ずで若かった青年たちが、この25周年というタイミングで「あの時、幸せだったよね」と振り返る数々のシーンには同じファンとしてグッと来るものがあったし、リアルタイム世代の自分には余計に響いた。

ネブワースの主役はバンドと25万人のファンだった

“The Swamp Song”をBGMに入場し”Columbia”でスタートした伝説のライブは、最初から最後まで終止凄まじい熱量を発していた。リアムのヴォーカルは無双、バンドの演奏も最高、それを受けて立つオーディエンスの熱狂っぷりもとにかく最強だった。

「これは歴史なんだ。まさにここ、たった今、俺たちが歴史なんだ」

ノエルがステージ上から放ったその言葉が全てだったように思う。12.5万人を集めた会場を渦巻く熱を帯びた空気は、これまで見てきたオアシスのライブのどれとも違って見えた。伝説が芽吹いたボードウォークよりも、グラストンベリーのNMEステージよりも、トップを掴んで凱旋した記念碑となったメインロードよりも、そのどれよりもスペシャルで崇高な時間だった。

“Supersonic”、“The Masterplan”、“Live Forever”、“Don’t Look Back In Anger”、”Champagne Supernova”など、彼らの絶頂期を彩る名曲たちがそこにあり、みんな当たり前のようにシンガロングして、時に涙する。そして最後は必ず笑顔になっていた。ノエルの気まぐれ(?)から”Rock “n” Roll Star”は演らずとも、ファンの心を満たしていた。

ネット社会以前の時代、そこに携帯電話を構える人なんて誰1人としていない。目の前に絶頂期のオアシスがいて、最高の楽曲たちがあって、只々みんなバンドと曲の世界に浸っていたのだ。そう、それはものすごくシンプルなもので、その体験こそが「オアシス」なのだと改めて思った。それと同時に僕自身オアシスファンで良かったと心から思える、そんな作品だった。

なお、11/19には本作のDVD/ブルーレイ及びライブ盤CD/レコード/カセットが早くも発売されるので、気になった方は是非(商品情報はこちらから)。

“Live Forever (Live At Knebwort)”

“Champagne Supernova (Live At Knebwort) featuring special guest John Squire”

映画情報

『オアシス:ネブワース1996』
2021年9月23日(木・祝)より、新宿ピカデリーほか全国112館にて公開。

配給: カルチャヴィル
出演: オアシス
監督: ジェイク・スコット
製作年: 2021
製作会社: ブラック・ドッグ・フィルムズ
プロデューサー: ガーフィールド・ケンプトン
製作総指揮: リアム・ギャラガー、ノエル・ギャラガー、アレック・マッキンレイ
ジャンル: 音楽ドキュメンタリー
製作国: イギリス
サウンド: 5.1ch
本編尺: 111mins
日本語字幕監修: 粉川しの
日本語版サイト: www.culture-ville.jp/oasisknebworth1996
(公開館一覧: https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=oasis1996)

商品情報

『オアシス|ネブワース1996』
2021年11月19日(金)発売  
今すぐ予約はこちら

① 2CD <スタンダード・エディション> 税込¥3,300
DISC1 & DISC2:ネブワース2公演音源より、フルセットリストを構成【Blu-Spec CD2仕様】

② 2CD + Blu-ray <デラックス・エディション> 24Pハードカヴァー・ブック仕様 税込¥6,000
DISC1 & DISC2:ネブワース2公演音源より、フルセットリストを構成【Blu-Spec CD2仕様】
DISC3:劇場版 『オアシス:ネブワース1996』(日本語字幕付) 【ブルーレイ】  

③ 3DVD 税込¥7,500
DISC1:劇場版 『オアシス:ネブワース1996』(日本語字幕付)
DISC2:1996ネブワース公演初日フルライヴ
DISC3:1996ネブワース公演2日目フルライヴ  

④Blu-ray(映像全部入り1DISC)税込¥8,000
■劇場版 『オアシス:ネブワース1996』(日本語字幕付)
■1996ネブワース公演初日フルライヴ
■1996ネブワース公演2日目フルライヴ

⑤ アナログ盤LP3枚組 ※2

⑥ 2CD+DVD ※2
ライヴ音源CD2枚組+劇場版 『オアシス:ネブワース1996』 【DVD】

※1 国内盤全形態に歌詞・対訳・解説付(映像は日本語字幕付)
※2 輸入盤のみの2形態

収録曲(CD) (曲順はセットリストと同じ)

<DISC1>
01. Columbia (Live at Knebworth, 10thAugust 1996)
02. Acquiesce (Live at Knebworth, 10thAugust 1996)
03. Supersonic (Live at Knebworth, 10th August 1996)
04. Hello (Live at Knebworth, 11th August 1996)
05. Some Might Say (Live at Knebworth, 11th August 1996)
06. Roll With It (Live at Knebworth, 11th August 1996)
07. Slide Away (Live at Knebworth, 11th August 1996)
08. Morning Glory (Live at Knebworth, 11th August 1996)
09. Round Are Way (Live at Knebworth, 10th August 1996)
10. Cigarettes & Alcohol (Live at Knebworth, 10th August 1996)

<DISC2>
01. Whatever (Live at Knebworth, 10th August 1996)
02. Cast No Shadow (Live at Knebworth, 10th August 1996)
03. Wonderwall (Live at Knebworth, 11th August 1996)
04. The Masterplan (Live at Knebworth, 10th August 1996)
05. Don’t Look Back In Anger (Live at Knebworth, 11th August 1996)
06. My Big Mouth (Live at Knebworth, 10th August 1996)
07. It’s Gettin’ Better (Man!!) (Live at Knebworth, 11th August 1996)
08. Live Forever (Live at Knebworth, 10th August 1996)
09. Champagne Supernova (Live at Knebworth, 11th August 1996) ※3
10. I Am The Walrus (Live at Knebworth, 10th August 1996) ※3
※3 ギタリストとしてジョン・スクワイア(ザ・ストーン・ローゼズ)が参加

Text by Shuhei Wakabayashi
Photo by  LIM Press