【rockin’on sonic 2026総括】ヘッドライナー出演キャンセルという最大のピンチをどう乗り越えたか

定着するか冬の洋楽フェス

今年もrockin’on sonicに参加した。今回は2日間開催から1日のみとなった。会場は変わらず幕張メッセだけど、ちょっとレイアウトが変わったところがあった。年末におこなわれたカウントダウン・ジャパンの会場を流用し、ギャラクシーステージ(約2万人)とコスモステージ(約8,000人)の2つのステージで交互にライヴが進行する。

飲食店もトイレ(屋外に仮設トイレもある)も十分あるし、椅子もテーブル数が多く、昨年に引き続き過ごしやすい会場ができていた。暖房も効いていて会場にいるときはコートを脱いでいた。合理的でなるべくストレスがないように作られている。立て続けにライヴがおこなわれているので、お客さんたちはライヴを観るのに熱心なのか、食事もトイレも長時間並ぶことはなかった。

海浜幕張駅に向かう京葉線の中でタイムテーブルをみながら、どのタイミングで食事するか、などを考えていたら「PET SHOP BOYSがキャンセル」という知らせをSNSの中でみることになった。一番観たかったのに……と呆然とする。しかも「(フェスでは)異例ではあるが、払い戻しをおこなう」とある。もちろん他にも観たいのがあるのでそのまま幕張メッセへ。PET SHOP BOYS“Can You Forgive Her?”のジャケット写真のコスプレをした一団がすれ違っていく。

昨年と違って入場には少し時間がかかったけど入ってしまえば先に書いた通り快適な会場だった。印象に残ったアクトに触れておく。

よく呼んだ!一番よいタイミングで観られたKNEECAP

昨年は半自伝的映画『KNEECAP』が公開されて注目が集まっている中での初来日。アイルランド語と英語でラップするヒップホップグループである。こんな旬な状況でKNEECAPを呼んできたこのフェスはPET SHOP BOYSのキャンセルという大マイナスがあったとしても大きな意義あるものとなった。

いきなり「フリー・パレスチナ」とメッセージがスクリーンに映しだされ、メンバーが登場して攻撃的な言葉と音を繰出していく。

808Stateの“Cubik”をサンプリングした“I bhFiacha Linne”という曲があり、終わった後におじさん世代がそれに反応していたように、KNEECAPの音は、ファンクやR&Bなどのブラックミュージックをサンプリングしたアメリカのヒップホップと違い、アシッドハウス〜EDMぽいところが特徴である。例えば、Atari Teenage Riotみたいなデジタルなパンクに近い。そのパンクな精神が伝わってくるステージだった。代表曲“H.O.O.D”でフロアを上げて強烈なインパクトを残していった。

BLOSSOMSは10年前にサマーソニックで観たことあるけど、その間に大きなバンドに成長した。80年代ぽいギターロックで、シンセサイザーの音も自分の世代からするとノスタルジーを感じさせる。曲もポップで聴きやすいし、ヴォーカルのトム・オグデンもフロントマンにふさわしい輝きを放っていた。

ヘッドライナーを失って代わりに大健闘!UNDERWORLDとTRAVIS

UNDERWORLDが始まる前に、改めてPET SHOP BOYSのキャンセルとUNDERWORLDが20分延長してくれること、実質的なトリとなったTRAVISが1曲追加してくれることがアナウンスされた。UNDERWORLDのためにステージ前に集まっている人たちが歓声を上げる。そして、UNDERWORLDはゴリゴリの4つ打ちテクノで攻めてくる。20分伸ばしたのは中間なんだろうか?あまりにも自然な感じで80分のセットになっていた。“Two Months Off”、“Cowgirl”、“King of Snake”や“Moaner”などのお馴染みの曲で盛り上げつつ硬質なビートで踊らせ続けてクライマックスはもちろん“Born Slippy .NUXX”でアゲていく。素晴らしかった。

トリになったTRAVISはほぼベスト選曲。ここ数年は髭を剃りスッキリしているフラン・ヒーリィが歌うゆったりとした名曲の数々をただ聴くだけで極上の体験となる。

あとバンドの仲がいいことが随所に感じられる。ライヴの定番ではあるけど“Flowers in the Window”ではステージ中央にメンバーが集まって1本のマイクを囲んで歌う。フランが弾いていたアコースティックギターのコードをアンディ・ダンロップが押さえて、ベースのダギー・ペインがストロークするという曲芸的な場面もある。ラストはこれも定番の“Why Does It Always Rain on Me?”でフロアをジャンプさせて盛り上げて締めくくる。やっぱりいいもん観たなという気持ちにしてくれた。そういう意味ではUNDERWORLDとTRAVISには感謝。しかし、やっぱりPET SHOP BOYSを観たかったな……本当に残念だった。

来年もやるようだけど、昨年も書いたように冬の洋楽フェスはなかなか定着しないけれども、どうにか続けてほしいものだ。開催時期や規模はどうなるのだろうか。

Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Nobuyuki Ikeda