リムプレスライターが選ぶフジロック’22注目アクト〜ルーツ・ロック編〜

今年、苗場で堪能する米国ルーツ・ミュージックの系譜と深化

フジロック2022、目前に迫ってきた。持ち物の準備や、タイムテーブルを見てはどのアーティストを観ようかとあれこれ思い巡らせている頃ではないだろうか。今年も一筋縄ではいかぬアーティストやバンドが軒を連ねている。フジロックのお楽しみのひとつと感じているのが、ブルーズ、カントリー、フォークなどアメリカのルーツ・ミュージックに基づく香ばしいロックに触れる機会だ。舞台が苗場に移った1999年のZZ Topを皮切りに、Neil Young(2001年)、John Fogerty(2010年)、The BandのGarth Hudson(2013年)、Grateful DeadのBob Weir(2003年)とPhil Lesh(2014年)、そして2018年のBob Dylan御大と、ルーツ・ミュージックを混交させロックの可能性を拡大させた錚々たる巨人たちから、Phish、Jonathan Wilson、Declan O’donovanにNathaniel Rateliff & The Night Sweats…ルーツを進化/深化させている直系のチルドレンも続々と姿を見せている。苗場の大自然に囲まれ堪能する土臭くも雄大な音の心地よさは筆舌に尽くしがたいものがあるのだ。そんなルーツ・ロックの文脈からドンピシャな3アクトを取り上げたい。

Dawes   7/29 (Fri) 19:00-20:30 FIELD OF HEAVEN

去る4月1日に今年の第一弾出演アーティストが発表された時、個人的に最も嬉しかったのが彼ら。アメリカはロスアンゼルスを拠点に2009年から活動する4人組ロックバンド、Dawesだ。今年に入って『リンダ・ロンシュタット サウンド・オブ・マイ・ヴォイス』、『ローレル・キャニオン』に『エコー・イン・ザ・キャニオン』と1960年代~70年代前半のウエスト・コーストロックシーンを描いたドキュメンタリー映画を立て続けに公開されているが、まさしくあの時代を想起させてくれる音と歌。バンドのメインソングライターにしてフロントマンのテイラー・ゴールドスミス自らローレル・キャニオン勢からの影響を公言しているとおりだ。

初期の必聴盤『Nothing Is Wrong』に収録されていた”A Little Bit of Everything”の動画を見てほしい。アルバムで聴けるバンドアンサンブルとは異なり、テイラーがアコギ一本で静かに弾き語り。とっぷりと暮れたフィールド・オブ・ヘブンで、琴線に触れる豊かなメロディとジャクソン・ブラウンを思わせる暖かい歌声に浸れるなんて最高に決まっている。

彼らが奏でる音はローレル・キャニオンサウンド一辺倒ではない。5枚目のアルバム『We’re All Gonna Die』はターニングポイントになったアルバムで、シンセのスパイスを取り入れたり、リズムセクションが一段とダイナミックになりロックバンドとしての次のあり方を提示。この辺りの音からから、ルーツ・ミュージックをオルタナディヴな手法で深化させているWilcoやDeath Cab For Cutieといった米国インディーロック勢に接近した印象を受けた。本アルバムから、サイケ臭がぷんぷんしていてどうしようもなさ感がたまらない呑んべえソング”When The Tequila Runs Out”をどうぞ。

7月22日には8枚目となる新譜『Misadventures of Doomscroller』のリリースも決定している。往年のロック 愛好家たちにもインディーロックファンたちにも刺さるバンドだ。初来日にして初苗場のステージ、ぜひこのまたとない機会に目撃してほしい。

Kikagaku Moyo(幾何学模様) 7/29 (Fri) 13:10-14:10 FIELD OF HEAVEN

お次は、つい先月はグラストンバリー・フェスティヴァルにも登場し、メンバー5人全員が日本人ながら海外を拠点に活躍してきたKikagaku Moyo(幾何学模様)。Austin Psych Fest/LevitationやDesert Dazeといったサイケフェスからボナルーにロスキルド、グラストまで、極上のサイケデリアを醸成して世界中の音楽ファンを唸らせてきた。ようやく苗場で観れる!と思いきや、何とラストアルバム『クモヨ島』をリリースし、現在世界各地でラストツアー中だという。最初で最後のフジロックでのステージとなる。これは見逃し厳禁だろう。

彼らの音を知るにはライヴの様子から感じ取るのが一番ということで、2019年10月13日に開催されたサーキットイベント〈SHIBUYA全感覚祭-Human Rebelion-〉での”Green Sugar”をお届けしよう。デッドヘッズが身体を揺らせている姿が想起される浮遊感満載のギターフレーズ、終盤にバンドが一斉に出力する緩急自在にして縦横無尽の怒涛のグルーヴに溺れてほしい。

十八番のとぐろを巻くようなサイケグルーヴも良いが、しんみりと味わうフォーク・ロック調の楽曲がこれまた絶品なのだ。ここにこそルーツ・ミュージックからのダイレクトなインパクトと和な静謐さの絶妙な掛け合わせの妙を感じざるを得ない。この曲、もしくは”Blanket Song”を森にサッと吹き込んでくる風を感じながら聴けるとしたら…想像するだけで感動してしまう。

「ミュージック・マガジン」の5月号でリーダーの黒沢剛が、バンド解散の理由のひとつとして、活動の規模感が似合わなくなってきたことをあげていた。こじんまりと仲間同士お互いの顔を見ながら笑顔で楽しく演奏していたいと。解散は残念だが歓迎するしかない選択だ。自主レーベルのグルグル・ブレインを手掛ける彼らが音楽を創作しなくなるわけではないだろうが、Kikagaku Moyo(幾何学模様)としての最後の雄姿を観ないなんて選択肢はない。

Jack White 7/30 (Sat) 21:10-22:40 GREEN STAGE

髪を真っ青に染め上げ、地元アメリカはデトロイトのライヴでの公開婚約からそのまま結婚もして『The Fear Of The Dawn』という昨今珍しいほどのド直球ロックアルバムをドロップし、フジロック直前の7月22日には今年2枚目のアルバムとなる『Entering Heaven Alive』がリリースされるという、2022年きっての粋な男No.1、Jack White。2000年代のロックンロール・リバイバルシーンをThe Storokesとともに牽引したThe White Stripesにはじまり、The Raconteurs、The Dead Weatherにソロプロジェクトとブルーズの魂が込められた生々しくプリミティヴなロックはかっこいいの一言。この男が2012年来10年ぶりに帰還するのだから、苗場に集う全ロックファンは必見必聴であることは言うまでもないだろう。

『The Fear Of The Dawn』から”What’s The Trick?”。刻み込まれるシンプルなリフの連投、ジャック印エフェクトてんこ盛りのつんざくギターソロ、キメのシャウトで今の世相をシャープに切り取る歌詞。徹頭徹尾、完璧なロックソングだ。

先日のグラストからのステージを。今回のツアーのセットリストでは、マッチョにアップデートされたThe White Stripesの楽曲たちを気前よく披露してくれている。”Ball and Biscuit”もそのひとつ。グリーンステージ一帯がブルーズ天国になるのが本当に待ち遠しい(もちろん”Seven Nation Army”をみんなで大合唱も!)。

今回はルーツ・ロックの視点からの注目アーティスト3選をお届けしたが、音楽はもちろんのこと食からワークショップや大道芸に映画、時事トークなどなど全方位的に楽しめるのがフジロックだ。現場では頭を空っぽにしてオープンな姿勢であちこち歩き回っていれば「何これ!?」という衝撃の出会いや発見をもたらしてくれることだろう。あなたにしかない今年のフジロックを存分に楽しんでほしい。

 

Text by Takafumi Miura
Photo by SMASH