パンと音楽とアンティーク2025 | 東京オーヴァル京王閣競輪場 | 2025.03.30

今回は春! 桜咲く競輪場

今年は3月に開催された「パンと音楽とアンティーク」。自分は3月30日(日曜日)にいってきた。開催自体は29日と30日の土日である。前日は雨が降って寒かったけど、この日は晴れて前日よりは暖かかった。夕方になると気温が下がってきた。

このフェスに3回連続で参加したけど、毎回手直しがおこなわれて、今回は西側立ち見席の奥にステージが設けられ、そこまではハンドクラフト系のアクセサリーなどの出店が並んでいた。メインスタンド1階にあるステージはこのフェスでもメインのステージでロック系やダンス系のアクトがでる。あとは屋外のステージで主にアコースティック系の演奏がおこなわる。メインステージの3階は出店もなく、特別観覧席がそのまま休憩所となっていた。

屋内に椅子がたくさんあるというのはフェスでは嬉しいもので、気温や天候で逃げ場があるのは助かる。しかも自分は体調がよくなかったので、座っている時間が長かった。

パンの出店は多く、人気のあるパン屋はかなりの行列になっていた。キッチンカーもでていたけど、ハンバーガーとかホットドッグ系が主になり、ご飯(お米)が自分がみる限りなくなった。いわゆるアンティークよりはアクセサリーや古着の出店が目立つ。メインスタンド2階は食器を扱う店が多かった。

お客さんは必ずしも音楽好きが来てるわけでなく、パンが目当ての人、雑貨を眺めに来ている人もいる。お客さんの年齢層は幅広い。子どもを連れた人も多く、中心は30代後半から40代くらいだろうか。今回はけっこう外国人(白人、黒人親子、インド系、中華系)もいた。全体的にこの日は今までの中で1番お客さんが多かった気がする。バンクでは競輪選手が練習していて音楽を聴きながら、パンを食べながら高速で駆け抜ける自転車をみることができる。

この日は、メインスタンド1階にあるPOSTCARD STAGEのカラコルムの山々から始まった。ステージをみるとギターがスタンドに備え付けられていた。こういうのってイエスのスティーヴ・ハウが“Roundabout”を演奏するときくらいしかみたとなかった。ストラップでギターを吊るさないので、ヴォーカルとギターの石田想太朗はギターを弾くときはスタンドのところにいて、そうでないときは自由に動ける。

音楽的にはキーボードが入ったZAZEN BOYSという感じで、鋭いマスロック的なサウンドに小川諒太の華やかなキーボードの音色が乗り、ヒップホップぽいラップ/スポークンワードの言葉が重ねられる。メンバー全員がコーラスできるのも強みである。

自分たちを「キネマポップ」と呼んでいるように映画的な場面やストーリーを思わせる言葉で不思議でノスタルジックな世界を作る。演奏のテクニックも申し分なく、木村優太のベースが図太くうねり、ぐらのドラムは狂気も感じさせる。歌詞が作る世界と演奏力とマスロック的なものを総合すると、要するにプログレッシブロックである。実際、プログレのイベントにも出演しているようだ。

ライヴは“東京自転車”から始まり、変拍子でユニークな世界を作る“タイムスリップできない”、“盗電団”、生田駅前で繰り広げられるシュールな世界“コラム・超現実館”、未発表曲“甘露だらり”、ZAZEN BOYSの影響が強く感じられる“大仏ビーム”、新曲“ブランコ・スカイライン”、超絶技巧で歌われるユーモア“週刊奇抜”、と全8曲で最高だった。

屋外のORANGE STAGEでLOSTAGEの五味岳久の弾き語りをなんとなく眺めて、POSTCARD STAGEでtoconoma。ステージ前に集まっている人が多かった。サウンドチェック時にリハーサルぽく“残酷な天使のテーゼ”を演奏する。おしゃれっぽいインストゥルメンタル曲に化けた。本編に入ってもムードは同じで心地よい音が流れていた。本編ではとなりのトトロから“風のとおり道”をカヴァーする。

ORANGE STAGEで片寄明人。円形にアーティストを囲む形で観る。人がいっぱい。GREAT3が伝説のバンド扱いされるという話をしながらアコースティックギターで歌われるGREAT3の“Oh baby”、片寄の7歳の息子がでてきてピアニカを吹いて参加した“Little Jの嘆き”が非常に心地よく和む空間と時間を創っていた。そして妻のChocolatが登場して片寄一家のステージとなる。Chocolatは可愛さと芯の強さを併せ持つ声で話し声とのギャップも片寄に突っ込まれていた。両親に挟まれて息子さんは二人が歌っているのをみていたり、タンバリンで演奏に参加したりしていた。

POSTCARD STAGEでパソコン音楽クラブ。思った以上にアゲで攻撃的な電子音でフロアを踊らせていた。

ORANGE STAGEでKIRINJIなんだけど、今までみたことないくらいの人たちが集まっていて円形のステージを囲んでいた。すごい人気。少し離れたところからKIRINJIのリハーサルを眺めていたら、オアシスの“Don’t Look Back in Anger”が聴こえてきて何だろう?と音の方へいってみると、CHERRY STAGEでNORTHERN BRIGHTの新井仁がギターを弾きながら歌っていた。新井はギルバート・オサリバンの“Alone Again – Naturally”もカヴァーする。寒くなったので屋内に入り、そのままPOSTCARD STAGEでTOKYO No.1 SOUL SETを観る。思ったよりも熱いライヴをみせてくれてKIRINJIが終わったあたりでさらに人が増えて大盛況だった。たくさんの人たちが踊っているところへBIKKEが煽りヒートアップしていく。自分は後ろの方の長椅子に座って聴いていた。モニターが少しみえるのでステージの様子も伝わる。

最後まで盛り上がり、お客さんたちは名残惜しそうに帰路についていった。今回で3回目の開催で回を重ねる度にいろんなところが改善されていって、前売り入場券の1日券が1,500円という破格の安さで、いろんな音楽を聴き、パンを食べて、雑貨や古着をみてまわることができるお得すぎるフェスである。

この日は場内の桜も咲き始めて春らしい日を過ごすことができた。パンが売り切れになる時間が早いとか、これでも競輪場の全部を使ってないのでもう少し拡張して欲しいとか、屋内ステージだけでもあと1時間延長して欲しいとかいろいろあるけど、まずは続けて欲しいと思う。

公式サイト
https://pan-ongaku-antique.com/2025/

Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Nobuyuki Ikeda