【フジロック’23】リムプレスライターが選ぶ注目アクト vol.1

フジ「ロック」なんでロックも聴こう

フジ「ロック」といいながら、最近、特に洋楽ではR&Bやソウルやヒップホップが目立つようになってきた。全世界的に大型フェスティバルでの傾向も同じようなものなので、ロックというのがマイナー化しているのは仕方がないことなのかもしれない。

だけど「ロック」を冠するフェスティバルなのだから、ちゃんとロックを聴いていこうというのがこの記事の趣旨である。もちろん、ヘッドライナークラスには、ストロークス、フー・ファイターズ、ウィーザーなど大物があるにはあるので、それ以外のところから紹介したいと思う。

ドミコ 7/30(Sun) 14:20-15:10 WHITE STAGE

まず、日本のドミコから。さかしたひかる(Vo/Gt)と長谷川啓太(Dr,Cho)の2人組で、この2人が生み出すグルーヴがすさまじい。ギターとドラムの2人組といえば、代表的なバンドはホワイトストライプスであるように、そのガレージなロックンロールというイメージに沿ってはいるのだけど、ドミコはよりサイケデリックでダーティなブルースの要素があり、日本的な雑食性がある。ブランキー・ジェットシティとか、モーサム・トーンベンダーあたりに共通するものが感じられる。

これは外国から来るお客さんに観てもらいたい。海外のロック文法に則りつつ、日本人によるロックが蓄積していって結実した格好よさをみせてくれるのだ。

100 gecs 7/30(Sun) 16:10-17:10 WHITE STAGE

そもそも「100 gecs (ワン・ハンドレッド・ゲックス)はロックなのか?」といわれそうではある。レーベルによる紹介文だと「ハイパー・ポップ」と書いてある。ポップを基本にラップやノイズをどんどん投入していくスタイルは安易にジャンルを決めることができないくらい異彩を放っている。真面目な人からすれば小馬鹿にしてんのか、舐めとんのか、と怒りそうなくらい、軽やかな手つきでジャンルを扱っている。でも、そこに往年のパンク精神を感じてしまうのだ。

最新アルバム『10,000 Gecs』の冒頭”Dumbest Girl Alive”でいきなりメタル風のギターが炸裂したかと思えば、”Hollywood Baby"も堂々としたロックナンバーとして聴ける。こうしたバンドはステージを観てみないと何ともいえないところもあり、そうしたギャンブル込みでステージを観にいきたい。

FEVER 333 7/28(Fri) 11:00-12:00 GREEN STAGE

2018年のフジロック、3日目のホワイトステージでの熱演が伝説になっている。「ホワイトでやべーやつがやってる!」と話が伝わり お客さんを集めていったのだ。ハードコアパンク+ヒップホップでレイジ・アゲンスト・ザ・マシーンを連想させるような力みなぎる音が特徴だ。次の来日公演では、日本テレビの朝の番組「スッキリ」にでて暴れまくっていた。意外な洋楽アーティストが結構でる番組ではあったけれども、FEVER 333はあまりにも異彩。朝から爆音を撒き散らしていた。

ところが2022年にギターとドラムが脱退。ジェイソン・アーロン・バトラーひとりになってしまった。今年5月に新しいシングルをリリースした際には、元マーズ・ヴォルタのトーマス・プリジェン(ドラム)と、エイプリル・カエ(ベース)、ブランドン・デイヴィス(ギター)という布陣で、ライヴもこのメンバーでおこなうようだ。フジロックも新たなFEVER 333を目撃しよう。

Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by  LIM Press