時代ともに音楽をアップデートしていく若手アーティスト
物事はその時代の変化によって見え方が異なるものだ。昔はかっこよくて当たり前だったものも、今の視点で見るとそれは「異質」なもので、人によっては「ダサい」と捉えられたりもする。その一方で、過去に流行ったものが一周回って「イケてる」風に見えるなんて現象も起きていたりする。ファッションで例えるならば、70年代、80年代、90年代、00年代、それぞれのリバイバルが時代によって起こり、それを現代風なテイストを取り込みつつ表現されている─みたいな現象だ。そんな現象は、音楽に対しても当てはまる。
それを踏まえて、ここでは2010年代後半以降にデビューした若手アーティストを3組ピックアップしたいと思う。1950年代にブラック・ミュージックを起源としてロックが生まれ、そこから70年以上の間に幾度も進化と変化を遂げてきた音楽。その中から彼らは自由にピックアップし、自分なりの解釈をし、現在の音として作品に落とし込んでいる。もちろんピックアップの仕方や、そのバランス、自由度は異なる。だからこそ、どのアーティストも見応えがあると思っている。
BLACK MIDI 7/30(Sun) 18:00-19:00 WHITE STAGE
まずは、昨年行われた日本ツアーのチケットが軒並み完売した英ロンドン発のバンド、ブラック・ミディ。昨年リリースされた最新アルバム『Helfire』は各メディアから絶賛され、キング・クリムゾンやCAN、PILなどのテイストを抽出しつつ、現在の技術を持って混沌さをとことんまで突き詰めた作品となっている。彼らの音楽におけるジャンルは、ポストパンクやニューウェイブ、プログレッシブ・ロック、ダンスパンクなどをミックスしたジャンル「クランクウェイブ」や「ポストブレグジット・ニューウェイブ」などと称されている。そんな彼らの楽曲が、圧倒的テクニックに裏打ちされた演奏力を持ってプログレッシブに展開されるのだ。想像するだけで鳥羽が立つ。
YARD ACT 7/30(Sun) 12:00-12:50 RED MARQUEE
続いては、英リーズ出身のポストパンクバンド、ヤード・アクト。昨年リリースされたデビューアルバム『The Overload』は、ハリー・スタイルズやウェット・レッグと並びマーキュリー賞にノミネートされた。決して上手とはいえないガチャつき気味の演奏に乗せるスポークンワード風なヴォーカルは、昨年フジロックに出演したブラック・カントリー・ニュー・ロードや前述で紹介したブラック・ミディと重なる部分もあるが、楽曲はとてもキャッチーで聴きやすく、労働者階級を代表する風刺的なリリックなんかはUKロック好きには絶対刺さるだろう。直近のセットリストには、トーキング・ヘッズを彷彿とさせる新曲“The Trench Coat Museum”も組み込まれている。デビューアルバムの曲と併せてチェックだ。
NEAL FRANCIS 7/30(Sun) 17:00-18:00 FIELD OF HEAVEN
ちょっとチルしたいなという人におすすめなのは、米シカゴのシンガーソングライター、ニール・フランシス。70sファンク/ソウルをはじめ、80sロック、AOR、カントリー、ゴスペルなどからの影響が伺える彼の楽曲には、昔懐かしいグルーヴ感や普遍的なポップさがある。特に顕著なのは、彼自身公言している70年代に活躍したシンガーソングライター兼プロデューサー、アラン・トゥーサンからの影響だ。そこには「あらゆるブラック・ミュージックの発展系としてのロック・ミュージック」という軸があって、その精神を受け継いでるのがニール・フランシスだ。彼の出演は3日目夕方のヘブン。陽の落ちるヘブンで聴く彼のオーガニックなサウンドはきっと最高だ。