【フジロック’23】リムプレスライターが選ぶ注目アクト vol.3

苗場と交わる化学反応に期待大!ちょっと異色な注目アクト達

長年通っている人ほどなんとなく“フジロックっぽい”アクトのイメージがあると思うが、逆に一見“フジロックっぽくない(?)”アクトが気になることがある。でも実際現地でライブを体験するとすごく新鮮に感じたり、名前だけ見た時に感じていた“ぽくない”なんて偏見に過ぎなかったと感じた経験は、みなさんもあることだろう。例えば最初は物珍しさから足を運んだ人も多かったかもしれないが、21年の上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテット、昨年の角野隼斗、今年初日の開幕を飾る菊池亮太 & ござと、ヘヴンのピアノアクトがもはや名物になってきた感じがあるし、ド直球のEDMに撃たれた19年のMARTIN GARRIXなんかも鮮烈に記憶に残っている。

それはアーティストのパフォーマンスが素晴らしいのは当然ながら、大自然に囲まれたフジロックの日々の中で体感するからこそ。“苗場で観るから”の付加価値は常連のフジロッカーには説明不要だと思うが、だからこそ一見“ぽくない”アーティストが生み出すこれまでのフジロックにない化学反応に期待したい。そんな観点から僕が今年注目するのはこの3アーティスト。言わずと知れた三者だが、フジロックでどんな姿を見せてくれることだろうか。

KEYTALK 7/20(Fri) 14:00-15:00 RED MARQUEE

まずは今年メジャーデビュー10周年を迎える、下北沢発4人組ロックバンドのKEYTALK。ロックインジャパンフェスに出るようなメジャーアーティストでいえば、昨年のマカロニえんぴつや今年出演するSUPER BEAVERの名前も挙がるが、ここまで明確にいわゆる“邦ロック”や“四つ打ちダンスロック”を表現するバンドが苗場に来るのは初めてなんじゃないだろうか。人気曲“MONSTER DANCE”のMVを観てみても、Bメロの「パン、パパン、ハイ!」だったりサビの合いの手だったりと、あまりにもフジロックで見たことがないノリで逆に気になってくる。だが堅実な演奏力に裏打ちされたバンドサウンドは確かなもので、見よう見まねでもこの喧騒に飛び込んでみたくなるというものだ。

 

矢沢永吉 7/28(Fri) 17:00-18:00 GREEN STAGE

同じく初日の注目アクトは矢沢永吉。パフォーマンスへの注目ももちろんのことだが、屈指の熱狂ぶりで知られる矢沢ファンが白スーツとリーゼントでビシッと決めて苗場にこぞって来ることからして、これまでのフジロックからしたらまったく想像がつかない。だが個人的な経験で言えば18年のBOB DYLAN & HIS BANDの時に仕事帰りでそのまま来たような(明らかに場違いにも思える)スーツのおっちゃんが隣で満足そうに演奏に浸っていた姿がとても印象に残っていて、そういったある種の異文化交流もフジロックの醍醐味。矢沢の前にUK気鋭のポストパンクIDLESを配置するところからも、今年のフジロックの趣向が見えてくるのではないだろうか。

 

きゃりーぱみゅぱみゅ 7/30(Sun) 23:00-23:45 RED MARQUEE

パレスオブワンダーも復活し、かなりアツいラインナップとなった今年の深夜帯の中でも、一際注目なのがきゃりーぱみゅぱみゅだろう。これまでのフジロックからするとかなり異質な感じがするが、苗場にEDMサウンドも馴染むことは先述のMARTIN GARRIXで証明済み。コーチェラで世界をも虜にしたキュートでポップなパフォーマンスを疲れも溜まりに溜まった最終日深夜の始まりに浴びるのだから、もうややこしいことなど考えずに全力で踊って遊べばいいだけだろう。間違いなく最&高が約束された時間を皮切りに、二度と来ることのないフジロック23の最終夜に雪崩れ込もうではないか。

書いていて気づいたことだが、僕はパフォーマンスはもとより気合の入ったファン達が苗場で弾ける姿を楽しみにしてるのかもしれない。異色にも思えるラインナップはマーケティング的な思惑などももちろんあるのだろうが、「〇〇が見たくてフジロックに来たらハマっちゃった」なんて話はよく聞くし、知らない音楽やはじめて見る層のファン達、そしてそんな中で揉みくちゃになって新たな自分にも出会うことは本当に楽しい。ここから始まる新たな“フジロックっぽい”に胸を躍らせながら、今年も苗場に向かうとしよう。

Text by Hitoshi Abe
Photo by  LIM Press