【朝霧JAM ’23総括】 晴れただけで100点満点!

今年の朝霧JAMは2日とも雨が降らなかった。それだけで最高といえる。空は晴れ渡り、富士山を仰ぎみる朝霧高原という場所の素晴らしさを堪能できた。夜は満天の星空だった。晴れると夜は寒くなる朝霧高原の法則の通り寝るときには寒かったけど。

晴れて快適に過ごせればそれだけで十分、もちろん音楽も素晴らしかった、と書けば十分ではないかと思わせるくらいの充実ぶりだった。

それではレポートにはならないので、音楽についてもうちょっと書く。ただ、今年の朝霧JAMを振り返って何がよかったのかと思い浮かぶのは、朝霧高原の光景や晴れた空や満天の星である。もちろん、ライヴもよかったけど、今回ほどフェス全体の空気というか、雰囲気が心地よかったのはないかもしれない。……と書いてまた音楽にたどり着けてない。なので、次の段落からちゃんと音楽について書く。

10月21日(土曜日)。CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN(チョコパコチョコキンキン)が今回の朝霧JAMの1発目である。期待度が高くてムーンシャインに多くの人を集めていた。3人組といいながらサポート及びゲストのミュージシャンもいてステージ上は賑やかだった。少し表情は硬いように思えたけど、だんだん小慣れてきて、アルバムの曲以外にも美空ひばり“りんご追分”のカヴァーなども披露した。これからの伸び代が楽しみなバンドである。

レインボーステージにでたHOVVDY(ハウディ)は「僕たち、ティーンエイジ・ファンクラブが大好きなんです!」というのがビシビシ伝わる。スコットランドに憧れるアメリカ人。ティーンエイジ・ファンクラブのどのアルバムに入ってもいいような曲を味わえた。

クールでオシャレ、かつ熱さもあるのがムーンシャインのTHE ALBUM LEAF(アルバムリーフ)とレインボーステージのBADBADNOTGOOD(バッドバッドノットグッド)だった。どちらもシンセサイザー(キーボード)でクールさを醸しだし、管楽器(トランペットやサックス)が生々しさを与え、ドラムが熱さを引きだす。THE ALBUM LEAFがエレクトロ寄り、BADBADNOTGOODがジャズ寄りでその対比も面白かった。

BADBADNOTGOODが終わると、レインボーステージで先日亡くなった谷村新司の“昴”が大音量で流れていた。空をみると満天の星空で、追悼の思いもあるし、なかなかよい選曲だったのではないだろうか。

翌日10月22日(日曜日)は、レインボーステージでTENDRE(テンダー)が盤石のステージをみせていたけど、時間を余らせてリクエストを募ってもう1曲演奏したのも含めて楽しかった。

ムーンシャインのsunking(サンキング)もエレクトロ機材+管楽器+生ドラムという編成でジャズを基本にエレクトロなサウンドを作りだす。

ちょっと同じような路線が多いなと思っているところへ、レインボーステージへ移動して観たKITTY, DAISY & LEWIS(キティー・デイジー & ルイス)はロックンロール、R&B、ロカビリーに根差した音楽は新鮮であった。続いてレインボーステージのくるり。この日のドラマーは石若駿である。“ワールズエンド・スーパーノヴァ”で始まり、新旧とりまぜた選曲。“虹”が圧巻だった。今回の朝霧JAMで観た中では1番ロックを感じさせるステージだった。

そしてNight Tempo(ナイト・テンポ)は、エヴァンゲリオンの主題歌「残酷な天使のテーゼ」から始まり、昨年のフジロックの深夜で盛り上げたような昭和歌謡グルーヴに近いDJセットを披露した。演歌あり、コミックソングあり、シティポップあり、アイドルソングあり、もちろん定番のWinkとか、和田アキ子とかやりたい放題で、その中にしれっとダフトパンクをかけたりもする。締めくくりには松田聖子“sweet memories”をかけて朝霧は終わりを告げたのであった。

Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Ryota Mori