LIM PRESSが注目するアーティスト15選!
いよいよはじまる…SXSW 2024 MUSIC FESTIVAL。出演するアーティストやバンドをはじめ、音楽に関わり音楽を愛する者たちが世界各地から開催地であるテキサス州の州都オースティンを目指すのだ。私も数時間後には大阪からオースティンへ飛び立つ。私にとっては2019年来5年ぶりとなるSXSWだ。あの音楽で充満した熱狂の6日間がこれからはじまるかと思うと興奮が抑えられない。
昨年、SXSW常連の猛者3名にインタビューする機会を得て今年の参加を誓ったわけだが、とどまる所を知らない円安と物価高騰に心が折れそうになった。しかし、だからこそ参加する価値がある。SXSWは、新しいオープンな価値観や視点に触れ、それぞれが未来を見つけ出す場なのだから。
そして、何より重要なのはSXSWが1987年にはじまった当初から変わらずライヴミュージックの魔法を祝う場であり続けているということだ。後に伝説と語られるようなパフォーマンスに、新生となり得るような才能の誕生…今年はどんなマジカルな瞬間が繰り広げられるのだろうか。
現時点でオフィシャルの出演者のみで1200を超えている。その中から現地取材を行うLIM PRESS編集部が注目するアーティストを自由気ままに15ほどピックアップ。今年参加する人もしない人も、SXSWの世界に触れ楽しんでいただけると幸いだ。
1. Lambrini Girls
フィービー・ラニー(Vo./G.)とリリー・マシエイラ(B.)のクィア二人組による英国ブライトンを拠点に活動するパンクバンド、Lambrini Girlsからはじめたい。パンクのゴッドファーザー、イギー・ポップ大のお気に入りバンドとして知られ、昨年イギーが主催したフェスティヴァル「Dog Day Afternoon」にも出演。その圧倒的なパフォーマンスでオーディエンスやメディアの耳目を集めた。Bikini Killに代表されるライオット・ガール(Riot Grrrl)に影響を受けつつも、男女やトランスジェンダーの権利、国を相手取っての社会的な主張、女性に対する安全な場の提供まで、パンクバンドとしての矜持を示している。問答無用に場を沸騰させる激しいステージとグルーヴは、今年のSXSWの台風の目となることだろう。
2. Yo Diablo
お次は2018年に結成されたスペインはバレンシアのサイケデリックロックデュオ、Yo Diabloだ。ギターのマルコス・エレーロが繰り出すブルーグラス、サーフロック、ブルーズ、ロカビリーのごった煮フレーズに、スペイン産らしくフラメンコの情熱まで加味された極上フィンガーピッキング。パウ・ガルシア・セラによるタイトかつ前のめりに畳みかけるビートとともに創り上げる、いと面白きサイケデリア。フロアを埋め尽くした聴衆が彼らのグルーヴの中で揺れている様が容易に想像できてしまう。
3. Grandbrothers
ドイツのデュッセルドルフで結成され10年以上のキャリアを持つデュオ、Grandbrothers。ドイツ系トルコ人ピアニストのエロール・サープと、スイスのエンジニア/ソフトウェアデザイナーのルーカス・フォーゲルが生み出す、豊かで硬質なグランドピアノの音色と、アンビエントで雰囲気のある電子音は心地よさの極致だ。しかも今回のSXSWが名物会場であるCentral Presbyterian Churchという教会に出演するというからたまらない。彼らの音像にドンピシャな雰囲気だし、彼らの最新作『Late Reflections』はケルン大聖堂で録音されたことからもいかにぴったりの会場かということがお分かりいただけるのではないだろうか。
4. Jack Barksdale
Jack Barksdaleは、今年で16歳になるテキサス出身のシンガーソングライター。リード・ベリーやハウリン ウルフ、トム・ウェイツ、レナード コーエン、ジョニー・キャッシュ、カーター ファミリーにウィリー ネルソンといったフォーク、ロック、ブルーズのレジェンドたちの影響を受け、9歳の頃にはオリジナル楽曲を書き、演奏を披露してきたというから驚きだ。レジェンド顔負けの渋い楽曲に人生の悲喜こもごもを表現した歌詞はロック好き親父たちのど真ん中を撃ち抜くことだろう。スライドギターもめちゃくちゃきまっている。シングル“Gone”は Spotify で 再生回数220 万回以上を超え、注目度がどんどん増しているこのタイミングで触れておくべきアーティストだ。
5. Kroi
今年1月20日には初の日本武道館ワンマンライヴを成功させ今乗りに乗っている5人組バンド、Kroi。確かなミュージシャンシップの基、影響を受けたR&B、ファンク、ソウル、ロック、ヒップホップといったブラックミュージックのうねるような強靭なグルーヴ満載の音楽は、ただただ踊れて楽しい。これぞライヴバンドだ。SXSWに集結する各国の音楽関係者や音楽ファンに発見され、世界進出のきっかけとなるであろう要注目のステージだ。
6. The Black Keys
間違いなく今年のSXSWの目玉の一つだろう。ダン・オーバック(Vo./G.)とパトリック・カーニー(Ds.)によって2001年オハイオ州のアクロンにて結成されたグラミー賞常連の名ロック・バンド、The Black Keysのお出ましだ。4月には待望の新譜『Ohio Players』をリリースする。SXSWでは、彼らのドキュメンタリー映画『This is a Film About The Black Keys』 も公開され、各分野の第一人者ばかりが出演する名トークショーである「keynote」にも登壇予定。ショーケースの方は、ニューアルバムからの楽曲お披露目とベストヒッツが次々と投下されるであろうStubb’sと、Junior KimbroughやR. L. Burnsideといったヒル・カントリー・ブルーズをカバーしたアルバム『Delta Kream』を丸々再現するという貴重なMohawkでの2公演が決定している。2004年のフジロック出演以来、かれこれ20年も来日していないのだ。目撃しておくよりほかない。
7. De Facto
オマー・ロドリゲス・ロペス(B.)と、セドリック・ビクスラー・ザヴァラ(Dr.)がAt The Drive-InからThe Mars Voltaへの過渡期に結成していたダブバンド、De Factoが20数年を経てSXSWで突如復活が発表された。当時はアイキーことアイザイア・オーエンズ(Key.)とジェレミー・マイケル・ワード(Vo./Syn./Melodica)の二人を加えた体制だったが、二人とも今は亡き人ということで、どんな形での復活となるのか、どんな音楽を奏でるのかさえ現時点ではまったく分からない。一貫して一筋縄ではいかぬオマーとセドリックのことだ。またとない見逃し厳禁のステージとなること必至だろう。
8. BODEGA
デビュー当時から出演していてSXSW常連バンドの趣のある、米国ニューヨークはブルックリンを拠点に活動する5人組ポストパンクバンドのBODEGA。スカスカのギターフレーズが刻まれ、重厚なベースラインに基づいてユーモアたっぷりに、男女なキャッチーなかけ声とともに突き進むこの音!醸し出ているDIY感にサブカル感、そして生粋のライヴバンドとくればもう…インディーロック好きのケツを蹴り上げること間違いなしだ。
9. maxime.
カナダはモントリオールのインディーポップ・アーティスト、maxime.。寝室で楽曲作成し、プロデュース、エンジニアからリリースまですべて自身で手掛ける徹底したDIYなアーティストだ。もうすぐリリースされる3枚目のアルバム『the life and death of a Dog』に先駆けてのシングル曲“apartment402”にぶっ飛ばされてしまった。青臭く突っ走りつつも毒気のある甘美なポップ。これすなわち最高ってことだ。
10. Viji
オーストリアのウィーン出身、現在はイギリスで活躍するアーティストのViji。昨年、名門レーベルのSpeedy Wunderground からデビューアルバム『So Vanilla』がリリースされた。しかも、本作はFontaines D.C.やWet Legを手掛けるレーベル代表でもあるダン・キャリーと共同で制作と注目度も高い。シューゲイザーやグランジ/オルタナティブの影響を感じさせる90s感あるキャッチーなサウンドと、気だるさと時折見せる激しさのコントラストが耳に残る歌声。今年のSXSWで話題をかっさらう気がしてならない。
11. waterbaby
スウェーデンのストックホルムで活動するサブ・ポップと契約したアーティスト、Kendra Egerbladhによるwaterbabyも目撃しておくべき新星の一人だろう。彼女のデビューEP『Foam』で堪能できるフォークとR &Bとの中庸なインディーポップに、そこに乗る控えめだが胸を打つ歌声は世界中に中毒者を出しまくっている模様。
12. Sofia Kourtesis
故郷のペルーの南国風サウンドと、現在の拠点ベルリンのクラブビートで世界中のクラバーたちを連日連夜沸かせているSofia Kourtesis。かつて自分がクィアであることで迫害され、ベルリンに移住したというソフィアは、祖国ペルーでジェンダー平等や、クィアの人たちの安全を求める活動も行っている。SXSWにおいても案の定、14日深夜のクラブに登場予定だ。当日はもう踊り明かすしかない。
13. dust
オーストラリアはニューキャッスルの4人組ポストパンクバンドのdust。彼らの十八番はエモ感ある前のめりに疾走する激情チューンだが、侮ることなかれ。シーケンサーで生み出されるふわふわしたアンビエントな電子音にジャジーなアルトサックスの音色が飛び交う。昨年リリースされたデビューEP『et cetera etc』でも楽曲を際立たせるかのように配置された“Intro”、“Interlude”、“Outro”の実験的なサウンドこそが肝だった。この手のバンドのライヴは問答無用に盛り上がることでしょう。
14. Altameda
2019年のSXSWにも出演していたAltamedaは、トロイ・スナタースとエリック・グライスからなるアメリカーナ/フォークロックデュオだ(ライヴはバンド編成になることが多い)。カナダはエドモントン出身で現在はトロントを拠点に活動しており、The Zombiesや、フジロック出演歴を持つNathaniel Rateliff and the Night Sweatsなどをサポートしながら、北米・ヨーロッパをツアーし腕を磨いてきた。その音楽性と経歴から同国の大先輩にしてレジェンドであるThe Bandと重ねてしまうのは私だけだろうか。
15. Rainbow Girls
彼女たちの2019年作『Give the People What They Want』が最高で、ストーンズもカバーしたジェリー・リーバーとアーティ・バトラーのペンによる“Down Home Girl”やボブ・ディランの“A Hard Rain’s Gonna Fall”、 クロスビー、スティルス&ナッシュの“Helplessly Hoping”といった名曲たちの秀逸なカバー、特にジョン・プラインの“Angel from Montgomery”にぶっ飛ばされて以来虜になってしまった。ようやくライヴを観ることが叶う。3人の暖かく絡み合う歌声に、極上のはもりを心ゆくまで堪能したい。
SXSW 2024 LIM PRESS (Spotify)
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