【朝霧JAM ’24総括】 もう1回言おう! 晴れただけで100点満点!

今年の朝霧JAMは昨年に続いて晴天に恵まれた。天候がよいだけで100点満点のフェスである。15年くらい前まではあったキャンプサイトの争奪戦みたいなのもあまり目につかなくなり、穏やかでまったりしたフェスとなった。もともとそういうフェスだったので、元に戻った感じである。

Photo by エモトココロ

初日、レジェンドの躍動

初日、10月12日土曜日のベストは、レインボーステージのCorneliusだった。音楽と映像が連動する演出は変わらず、その映像がブラッシュアップされたし、今までに自分がライヴで聴いたことない曲も聴けた。Corneliusのライヴではロック、というか音楽のさまざまな層が重ねられた厚みを感じることができるのだけど、それが小山田圭吾のキャリアと重ねることもできる。そうした徐々に変容していくバンドの最新形を体験することができた。

Corneliusと並んでよかったのは、ムーンシャインでおこなわれた、いとうせいこう is the poet with 小泉今日子。冒頭、キョンキョンが「なんてったってア〜イドル〜」と歌いだした。そしてスカのリズムに乗せてあの名曲が歌われる。朝霧JAMで本人が歌う“なってったってアイドル”(一応タイトルは“なんてったってロックフェス”となっているけど)が聴けるとは。ここでグッと掴まれる。そして“FADE OUT”、“丘を越えて”とキョンキョンのシングル曲が披露された。スカ、ダブ、ラヴァーズロック、とジャマイカ由来のリズムは強靭に鳴り、バックを務める人たちの響きは心地よい。2年前の満島ひかりのときと同様に、与謝野晶子や平塚らいてうの言葉を引用したり、“バディ”という新曲もやって、アイドル全盛期のキョンキョンと現在でも進化するアーティストとしてのキョンキョンを観ることができた。

この日のレインボーステージ、最初に登場したXAVI SARRIAはバレンシアの伝統的な楽器ドルサイーナの響きを生かし、パンクから出発してスカを通り、デジタルぽい感触のあるダンスビートまで多彩なリズムで踊らせ、印象的なフレーズでコーラスをおこなわせ、フロアをしゃがませてからの立ち上がってジャンプなど「パーティー」の盛り上げ役を全うした。シャビ・サリアは「フリー・パレスチナ」や反ファシズムの強力なメッセージを持っていて、そうした戦う姿勢も感じられた。

レインボーステージの夕方を飾ったKIASMOS (LIVE SET)は、音源で聴いたときの印象と違って、しっかりとしたビートでレインボーステージを踊らせた。シンセサイザーの音が繊細で上品であることは変わらずに、ライヴセットにするならちゃんと踊らせないといけないという使命感が伝わってきた。

1日目が終わってキャンプサイトを歩いていたらテントから若い男たちが「なんてったってアイドル〜」と歌う声が聞こえてきてキョンキョンのインパクトはかなりあったんだろうなと感じる。夜中は東の空に富士山がぼんやりみえて頭上は満天の星だった。

Photo by エモトココロ

2日目、圧倒的な歌声

2日目、10月13日日曜日は、レインボーステージのELEPHANT GYMから観た。途中、強風でテントが舞い上がりステージの裏に落ちたり、スピーカーの故障で音がでなくなったときが何度かあるなどのトラブルがあったけど、涼しい顔をして凄まじいテクニックを披露して、オシャレでかつ明るいステージで魅了していった。

意外、といっては十分なキャリアのある方に失礼だけども想像以上に素晴らしかったのは、レインボーステージの森山直太朗だった。“さくら(独唱)”で始まり、“生きてることが辛いなら”、“夏の終わり”、“生きとし生ける物へ”と自分でも知ってる曲を惜しげもなく披露し、その間を“君のスゴさを君は知らない”とか、“どこもかしこも駐車場”という曲で埋めてユーモアや音楽的な引き出しの多さをみせつける。森山直太朗というなんとなくみんなに知られているアーティストのすごさとエンターテナーぶりを存分に感じさせた。

レインボーステージのSTUTS (BAND SET)は、格好いいビートを繰りだし、ゲストのラッパーがゴリゴリの言葉をぶつけてきているのに、演奏を終えると「えーっと、あの……」と人のよさそうな内省的な青年の喋りになり、だしていた音とのギャップが面白かった。

今回は早めに帰路に着いたので、観たのはSTUTSまでであった。今回も過ごしやすく音楽的にも充実していた。近隣のホテルに泊まるとか1日券などのキャンプをしないプランが導入されて、どのように変化するかと思われたけど、雰囲気自体は大きく変わることはなかった。この雰囲気を保ちながら、すでに20年続いているけれども、さらに長く続くフェスになってほしいと願う。

Photo by HARA MASAMI(HAMA)

Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by 井上勝也(TOP)、エモトココロ、HARA MASAMI