ウィルコ ・ジョンソンと日本のオーディエンスが共有したもの

来日間近! ロックの人間国宝を体験しよう

ウィルコ ・ジョンソンは何度も来日しているけど、特に記憶に残っているライヴを2つ書いておきたい。ひとつは2011年4月の来日公演だ。

その年の3月11日に東日本大震災があって、その後の原発事故などで多くの海外アーティストがライヴを中止するなか、予定通り日本でライヴをおこなったのである。

4月の時点では、大きな不安が日本を覆っていて、先行きの見通しが立たなかった。節電が叫ばれ、しばらくプロ野球のナイトゲームはできなくなり、街の明かりが消えた。その年の夏フェスはどこも開催されたのだけど、4月の時点では、おこなえるかどうかわからなかったのだ。

ウィルコ ・ジョンソンはそれでも渋谷クアトロのステージに立ち、いつものようにギターを弾いていて、その姿をみてどれだけ励まされたか。そのころに新たなドラマーとしてディラン・ハウが加わり、盟友でベーシストであるノーマン・ワットロイと合わせて3人編成となり、今に至るのだ。

smashing magのレポート(4月6日 大阪・心斎橋クラブクアトロのもの)

そしてもうひとつ、2013年にすい臓ガンが発覚し、延命治療をおこなわずに残りの人生を全うするとして、フジロック2013に出演したことも忘れがたい。いつものようなステージアクション、硬質なリフをガンガン刻んでいく姿に、死を前にして人はどのような振る舞いができるのだろうか? という命題に答えるかのような演奏だった。続く2014年も来日ツアーも余命とか関係なく鋭いギターを弾いていたのである。

fujirock express2013のレポート

smashing magのレポート(2014年3月10日 渋谷クラブクアトロ)
smashing magのレポート(2014年3月15日 京都・磔磔)

日本が震災で危機感を覚えているとき、ウィルコ ・ジョンソン自身が大病で生死の境を行き来しているとき、このようなときのウィルコ ・ジョンソンを日本の観客と場を共有したことは、誇るべきことだろう。ライヴというは、そのとき、その場の一回しかあり得ないことの重さを観た人たちは感じたのではないだろうか。

がんも治って精力的に活動をおこない、近年頻繁に来日公演をおこなっているけども、2018年のウィルコ ・ジョンソンはこのときだけなのだ。まもなく来日ツアーがおこなわれるので、ぜひ今の彼を体験してほしい。

9月18日(火)渋谷クラブクアトロ
OPEN 19:00/START 20:00
TICKET:前売¥6,500(1ドリンク代別)

9月19日(水)渋谷クラブクアトロ
OPEN 19:00/START 20:00
TICKET:前売¥6,500(1ドリンク代別)

9月20日(木)名古屋クラブクアトロ
OPEN 19:00/START 20:00
TICKET:前売¥6,500(1ドリンク代別)

9月21日(金)梅田クラブクアトロ
OPEN 19:00/START 20:00
TICKET:前売¥6,500(1ドリンク代別)

9月23日(日)京都 磔磔
OPEN 17:00/START 18:00
TICKET:前売¥6,500(1ドリンク代別)

9月24日(月・祝)広島クラブクアトロ
OPEN 17:00/START 18:00
TICKET:前売¥6,500(1ドリンク代別)

詳細は以下のサイトで

http://smash-jpn.com/

Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Tomoko Okabe