原始神母 〜 PINK FLOYD TRIPS 〜を今こそ観る理由

今回は『ウマグマ(Ummagumma)』50周年、『ザ・ウォール(The WALL)』 40周年がテーマ

ピンク・フロイドをトリビュートする日本のバンド、原始神母の六本木EXシアターでのライヴが近づいている。ネットを見ていると「今回は『ウマグマ』だから……」みたいなことを書いてあったりする。自分もそのような気にもなっていたけど、神戸チキンジョージでのライヴを観て考えを改めた。

むしろ、『ウマグマ』だから観るべきだ、と。

長いピンク・フロイドの歴史の中で名盤と呼ばれるアルバムは多い。『夜明けの口笛吹き』(The Piper at the Gates of Dawn)が好きな人、『原子心母』(Atom Heart Mother)に衝撃を受けた人、『おせっかい』(Meddle)こそ最高だと思う人、『狂気』(The Dark Side of the Moon)が頂点だとする人、『ザ・ウォール』 (The Wall)のメッセージに震えた人、それぞれいると思うし、それ以外の作品にも根強い支持がある。その際になかなか地味だと思われるアルバムが『ウマグマ』かもしれない。

『ウマグマ』は今から50年前の1969年に発表されたピンク・フロイド4作目のアルバムである。原始神母は50年を記念して『ウマグマ』のナンバーを取り上げるとのこと。『ウマグマ』は初期から中期への橋渡しになる作品で、2枚組として発売された。1枚目は過去作品のライヴヴァージョン。2枚目はバンドのメンバーがそれぞれ作ったソロ作品が収められている。ディスク1はスタジオ録音の作品より生々しい勢いを感じさせるものだけど、問題はディスク2の方だ。

そのディスク2は、各メンバーが自由に作曲していて、60年代末の時代もあって実験的な音楽が占められている。この実験精神は次の『原子心母』でさらに推し進められ『狂気』で完成するわけで、サイケデリックとプログレッシヴ、どちらのピンク・フロイドがみられるという作品なのだ。正直、自分も『ウマグマ』のディスク2を聴くことはあまりなかったんだけど、神戸でのライヴを観て、人が歌い、演奏し、それを生で観ることによって、『ウマグマ』ディスク2のチルなところや、面白さなどを、ライヴハウスの場では奥行きを感じさせる手触りがあるのだ。これは自分でも驚くくらいの体験であった。

いける人は是非是非いってもらいたい。

もちろん、今までの原始神母の定番となる曲もたくさん演奏されることでしょう。また、『ザ・ウォール』も発売から40年経ったということで、ライヴセットの後半は『ザ・ウォール』からの曲が多く取り上げられる。『ザ・ウォール』も2枚組のアルバムで、現代社会の疎外感、教育などの抑圧を描いたロックオペラ的な作品である。そのテーマは現代でも通用するものだ。実験的な『ウマグマ』とメッセージ色が強い『ザ・ウォール』、そしてその間をつなぐ名曲の数々、それらをじっくりと堪能できるライヴはもうすぐである。

《info》

原始神母 ~ PINK FLOYD TRIPS ~ TOUR 2019

2019/12/21(土)六本木 EX THEATER
OPEN/START 16:30/17:30 
前売/当日 ¥6,000/¥6,500(D別)
全席指定

《Tickets》

2019/12/21(土) 六本木 EX THEATER
チケットぴあ:
0570-02-9999[Pコード:160-824]
ローソンチケット:
0570-084-003[Lコード:71118]
e+(イープラス)
ディスクユニオン新宿プログレッシヴ館、ワールドディスク、レコファン渋谷店、タワーレコード川崎店
(問)SMASH 03-3444-6751

詳細→ http://pinkfloydtrips.com/

過去のレポート
https://limpress.com/tag/%e5%8e%9f%e5%a7%8b%e7%a5%9e%e6%af%8d-pink-floyd-trips

Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Koichi Morishima