eastern youth | 東京 SHIBUYA CLUB QUATTRO | 2021.04.17

力まず、歩みを止めず

1月に行われた2日間連続ライブから、沖縄のフェス出演を挟んで3ヶ月経過した。4月17日、eastern youthの「単独公演 2021 春」東京公演が渋谷クラブクアトロで行われた。前回同様フロアには椅子が並べられ、バンド側も観客も今までどおり感染対策に配慮しながらの開催となった。吉野寿(Gt/Vo)は序盤に「もう慣れましたけど、このスタイル。皆さんに無理を強いるような形になってしまって、すみませんと思ってます。……本当はあんまり思ってません。しょうがないもんね」と語る。続けて、「いつでも葛藤がありますよ。こういうことしていていいんだろうか? ケツをまくって廃業した方がいいんじゃねえのか? とすら思いますよ。すいません。生まれてすみません、……とは思ってない」と語って次の曲の演奏を始める場面があった。コロナ禍の第4波と呼ばれる情勢において、心情のゆらぎは当然ありつつ、淡々と力まず、歩みを止めることのないバンドの姿勢が貫き通されたライブだった。

18時、Built to Spillの”Some”をバックにメンバーが登場。吉野は田森篤哉(Dr)が着ているシルバーのシャツに黒のジレというドレスアップ感のある衣装を指して「鳩は出ません」と言って、空気が和む。1曲目は定跡どおり、eastern youthの現在を象徴する”今日も続いてゆく”で幕を開ける。2曲目の”365歩のブルース”以降、1月とは全く異なる選曲で進行していく。最新アルバム『2020』から演奏された”それぞれの迷路”と同じように、90年代、00年代に作られた曲にも充実感がある。吉野の咆哮、冴えた表情やアクション、ギターの鋭利な響き、田森のパワフルで華のあるドラム、村岡の緻密なベースが絡み合って発する膨大なエネルギーは、爆音と静寂、緊張と躍動のうねりを生み出し観客を飲み込んでいった。

「マンボウだかサルサだか知らねえけど、時間がケツがあるんです」と吉野が終演時間を気にしていたためか、全体的にMCは簡潔だった。「何にも言いたくない。言いとぅない、tonight!」と2018年のツアーで吉野がよく言っていたフレーズが久々に飛び出したので、懐かしさを感じた人はいたかもしれない。ライブでおなじみの代表曲で構成された後半からは、いっそう演奏に引き込まれていく。”踵鳴る”は情熱的に疾走し、”矯正視力〇・六”から、村岡のコーラスによって新鮮味と驚きが宿った”無用ノ助”、”雨曝しなら濡れるがいいさ”へ一気に繋いだ流れに圧倒されているうちに、たたみかけるように、”沸点36°C”、”夜明けの歌”へとラストスパートをかけてくる。「今日は本当に、本当に、ありがとうございました。そしてまた俺たち、何度でも、何度でも、街の底で会おうぜ!」と吉野が力強く言い放ち、本編ラストは”街の底”。吉野は間奏でステージ中央へ一歩ずつ進み、音を軋ませながらうずくまり、立ち上がって身を翻すと静かな客席の興奮と感嘆はピークに達した。

ふたたびステージに登場した3人。村岡から「9月22日にLINE CUBE SHIBUYAでeastern youth初のホールコンサートを開催することになりました。帰りにポスターが貼ってあると思うので、ぜひご覧ください」と嬉しい発表があった。アンコールでは吉野のシャウトに合わせて客席からも多数の拳が掲げられ、”DON QUIJOTE”が演奏された。ダブルアンコールでは、ギターを受け取るときにロボットダンスのような動きをしていた吉野が突然「涙の…」と村岡に風見慎吾の”涙のtake a chance”の歌詞を振ってみるも、世代ではないので困惑する村岡に、クールな田森。「ジェネレーションギャップ!」と叫ぶ吉野。相変わらずな3人のやりとりに頬が緩む。この日最後の曲は、”いずこへ”。気迫をはらんだダイナミックな演奏を存分に受け止めた観客は、演奏を終えた3人へ惜しみない拍手を送っていた。時間は19時40分過ぎ。20時まで、充分な時間を残していた。

この東名阪を巡るツアーの続きは、5月17日に名古屋クラブクアトロ、5月18日に梅田クラブクアトロで開催される。

<SET LIST>
01.今日も続いてゆく
02.365歩のブルース
03.それぞれの迷路
04.男子畢生危機一髪
05.地下室の喧騒
06.鉛の塊
07.黒い太陽
08.ソンゲントジユウ
09.踵鳴る
10.矯正視力〇・六
11.無用ノ助
12.雨曝しなら濡れるがいいさ
13.沸点36°C
14.夜明けの歌
15.街の底

E1.DON QUIJOTE

E2.いずこへ


eastern youth LINE CUBE SHIBUYA 単独公演

2021年 9月22日(水・祝前日)
LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
開場 17:45 / 開演 18:30
前売:¥5,000(全席指定)
※客席<グループディスタンス形式>で開催
https://smash-jpn.com/live/?id=3502


eastern youth 単独公演 2021 春

名古屋 5/17(月) 名古屋クラブクアトロ
大 阪 5/18(火) 梅田クラブクアトロ
Open 18:30 / Start 19:00 自由席:¥5,000(ドリンク代別途)
https://smash-jpn.com/live/?id=3483


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Text by Keiko Hirakawa
Photo by Keiko Hirakawa