KING BROTHERS | シマネジェットフェス in 島根 古墳の丘古曽志公園 | 2022.10.08

唯一無二の好敵手

10月8日、ギターウルフのセイジの故郷である、島根県松江市の古墳の丘古曽志公園で行われた「シマネジェットフェス」にキングブラザーズが出演した。

この日はスタート時の朝9時から快晴に恵まれ、眼下に宍道湖を望む最高のロケーションの中、3年ぶりの有観客で開催された。フェスの後半、ヤマタノオロチステージでThe Courettesのステージが終わるやいなや、観客は隣のスサノオステージへ移動した。

めちゃくちゃになろう、とケイゾウ(Vo/G)の一言で“スーパーX”からライブは始まった。ケイゾウがマーヤ(G/スクリーム)とゾニー(Dr)の方に身体を向けるたびバンドの激しさは増す。髪を振り乱しながらも鉄壁のグルーヴを産み出し、瞬く間に観客を興奮のピークへと放り込んだ。マーヤは「人手が足りない」と言いながら何の躊躇もなくステージ前の観客の頭上へと歩を進め、度肝を抜かれた後方の客が慌てて駆け寄っていたのが印象的だった。

マーヤは何度も客の中に飛び込みながら、ギターの手を止めることはない。数々の笑顔が空を仰ぎ見、撃ち出される音像を受けて自由に踊っていた。ケイゾウも負けじとステージから観客の中へ飛び込み、「ここは人殺し以外自由ですから、皆さんのパワーはロックンロール、それすなわちギターウルフの精神にありますから、ロックンロールの精神を俺たちと同じようにギターウルフから持ち帰ってください」と叫んだ。

ゾニーは加速しながら爆発的な打音を放ちつつも、的確にここしか有り得ないというタイミングで曲の要所要所を華麗に決めていった。めちゃくちゃになりながらも全くブレがないどころか、どこまでもグルーヴし続け、無敵のステージングを見せていく彼ら。起爆剤で有りつつも冷静な舵取りをするゾニーと、舞台監督としての圧倒的な采配を振るケイゾウと、阿吽の呼吸で全て昇華させてしまうマーヤのスター性、どれが欠けてもキングブラザーズにはなり得ないのだ。

「兵庫県西宮からギターウルフぶっ倒しにきました。ギターウルフは世界一、だがこの日本にもその世界一のギターウルフに迫ろうとしているバンドが西宮にいるという事を覚えて帰ってくれよ」最後の”ルル”で観客の上に立ちそう叫んだマーヤ。前のステージでキンゴンズがステージテントの上にギターを乗せたままにしていたのだが、取ってきてよ、というケイゾウ無茶振りにマーヤは軽々とステージ上方へと登り、ギターを降ろしたのだった。それで終わりかと思いきや、ケイゾウはシールドをそのギターに繋いで再びマーヤに渡し、受け取ったマーヤはそのままテッペンでギターを弾き、曲の締めでステージ前に飛び降りた。観客はこれ以上ないという盛り上がりを見せた。

コロナ前、2019年のジェットフェス後にギターウルフセイジが言っていた言葉を思い出した。「みんなバンドをどんどん辞めていって、もう国内にライバルはキングブラザーズしかいない」ギターウルフがあるかぎり、キングブラザーズは好敵手でい続けるのだろう。

今後のライブスケジュールはキングブラザーズオフィシャルサイトでご確認ください。

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Text by Tomoko Okabe
Photo by Tomoko Okabe