KING BROTHERS | 大阪 難波メレ | 2023.02.05

爆音と轟音が交錯した一夜

前日の西宮で行った25周年記念ライブを凌駕するライブを、こんなに早く見られるとは正直思っていなかった。2023年2月5日大阪・難波メレ、2マンの相手はDMBQで、爆音対轟音の先攻はキングブラザーズだ。

1曲目は“Birth of The Cool / クール誕生” だ。岩盤をぶち壊しながら突き進む重機を連想させるこの曲、ケイゾウ(Vo/G)のギターはどこまでも重く、マーヤ(G/スクリーム)は終始ケイゾウとゾニーに身体を向けてグッと入り込んでいる。 この日、凛とした佇まいを崩すことのなかったゾニー(Dr)が繰り出す、表現力豊かな打音が無彩色な楽曲の世界を鮮やかに蘇らせていく。“Sonics” で、ケイゾウは頭上にギターを持ち上げながら最前列にお尻を突き出しフリフリと、ファンサービスに余念がない。

前日にアルバム『6×3』を曲順まま披露した彼らだが、この日は逆順で演奏されていった。“1979” でマーヤは「ロックンロールが鳴っている」と嬉々として叫んだ。もっとDMBQと一緒にやりたい、とライブ中にも語っており、水を得た魚のように踊りながら演奏していた。続く“There is nothing / 何もない。” アルバム発売当初にもライブで演奏されてこなかったこの曲も、淘汰されず生まれ変わり、地下のライブハウスという状況も相まって、深海を揺らぎながら沈んでいくようなトランス感を与えていた。

重くのしかかるサウンドから、踊れるビートまで、25年間でバンドが研ぎ澄ませてきた光はスパークして、盛り上がったフロアから何度も歓声が上がった。“魂を売りとばせ!!”のゾニーのカウントに合わせて客の声が重なり、ケイゾウは声を枯らしながらもフロア全体を煽っていった。

メンバーが入れ替わる度、楽曲を解体しては組み上げてきたケイゾウとマーヤ。「ロックンロールを信じるだけで、何もかもぶっ飛ばせます、それを俺とマーヤが証明します」と笑みを浮かべて語ったケイゾウにもグっときたが、何より“ルル”でマーヤが「25周年ここまできたぜ、DMBQ先輩だけど同世代なんだよ、もう残ってねーだろくそ格好いいバンド!」と力強く言った言葉に、目頭が熱くなった。「どこへ行けばいい?転がるように」そう歌う“69” は、難波メレの前身カフェブルー で2004年4月4日に撮影された『Live At Cafe Blue』のDVDにも収録されている。

収録日はちょうどアルバム「Blues」のレコ発ライブで、当時のDrは、現DMBQの和田晋侍だ。ケイゾウとマーヤの深いリスペクトの想いが、演奏のそこかしこに見え、見守るフロアから掛けられる声もあたたかかった。

一方、ゾニーはクールにバンドの真ん中で、ビートを操っている。キングブラザーズ史において最長ドラマーとなった今、ムードメーカーでありグルーヴマスターとしての彼はなくてはならない存在だ。ケイゾウは「このビートに乗ってセクシーに踊ってくださいと」ゾニーへのリスペクトとして、長めのメンバー紹介を差し込んだ。本能のまま鳴らす野生児のような和田晋侍も、現状認識力の高さで瞬時に必要なビートを導き出すゾニーも、全く違ってどちらもキングブラザーズそのもの。全く不思議なバンドである。

最後は、客の呼び声によってフロアに降り“ルル”で観客に囲まれながらライブを締めた。マーヤが担がれながら「まだまだ俺たちには伸び代しかない!」と叫ぶのを聞き、最高かよと思わず口走ってしまったほどだ。ひさびさに終わったと同時に頭からもう一度見たいと思う快楽指数MAXの夜だった。

<SET LIST>
1.Birth of The Cool / クール誕生
2.Sonics
3.There is nothing / 何もない。
4.Paint It Black!! / 黒くぬれ!!
5.Doo Doo Scratch
6.魂を売りとばせ!!
7.Sympathy For The XXXXX
8.69
9.Big Beat
10.ルル

詳細はオフィシャルサイトをご確認ください。

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Text by Tomoko Okabe
Photo by Tomoko Okabe