OASIS | 英ロンドン Wembley Stadium | 2025.08.03

6つの星が集まった瞬間、新たなオアシス伝説がはじまる。 追いつづけよう。彼らの旅路の先に行き着く景色を見たいから。

2025年8月3日(日)に、イギリス・ロンドンにて開催された『oasis live ‘25』。この日、ロンドン市内の別の場所では雨が強く降っていたようだが、会場周辺は晴れていた。まるで、お天道様までオアシスの復活を祝福しているようである。場外はすでにお祭りムードで、会場周辺のパブでは、オアシスのファンが昼間から酒とジャンクフードを片手に踊りだし、曲名にちなんだカクテルも提供されていた。オフィシャルグッズ売り場も長蛇の列。アディダスとのコラボ商品は大変人気で、売り切れが続出していると現場の方に教えてもらった。

ウェンブリー公演を含めたUKアイルランドツアーは、スペシャルゲストにキャストとリチャード・アシュクロフトが登場するとのことで、私は気合が入っていた。サポートアクトなんて言葉では片付けきれない、今宵の祭りに相応しい2組だ。絶対に見逃せない。ライブだといつも顎に手を置いて熟考するのが癖の私。だけど、今日はいつも以上に考えが浮かんでくる。1曲1曲を終えるたびに「この時、どういう感情で制作したのだろう?あの曲は何からインスパイアを受けているのか?」など、うんうん唸る私の姿が他の客にどう映ったのか…。まあそれはさておき、オアシスに熱狂をつないでいくというよりかは、「今は俺たちを感じろ!!」と言わんばかりの演奏と歌唱力でフロアを圧倒する2組。とりわけ、アシュクロフトの“Sonnet”、“Bitter Sweat Symphony”は、「このあと登場する主役のオアシスを食ったのではないか?」と、この時ばかりは思ったくらいにオーディエンスが団結し、アシュクロフトが「C’mon!」と叫べば、呼びかけ以上の声量で応える。呼吸がピッタリと合わさった瞬間、グルーヴが生まれていた。

現地時間20時15分。音量測定器がスクリーンに出現。ステージが暗転し、“Fuckin’ in the Bushes”がかかるやいなや、今まで座っていたオーディエンスも全員総立ち。歓声を超えた「悲鳴」と「雄叫び」が場内に響き渡る。オアシスのメンバーが入場した瞬間、私は感激のあまり顔を覆って下を向き、号泣していた。「いやいや、ステージを見なさいよ。」などと自分でツッコミを入れつつ、(余談だが、ノエル・ギャラガーとリアム・ギャラガーのハグは見逃さなかった)「Thank God!!!OMG!!!」と泣き叫ぶファンとハグしたのは良い思い出だ。ここでは全ての人が仲間。オアシスの名の下に集った者同士だから、皆優しい。

「オアシスが生まれ育ったイギリス。こんな奇跡を現地で目撃することができるなんて、もしかして夢…?」

古典的な方法ではあるが、頬っぺたを何度もつねりながら今、目の前に起こっていることが現実か否かを何度も確認したくらいだ。

「オアシスが帰ってきたぜ!お前ら、俺たちを目に焼き付けておけよ!!」と、勢いのまま投入した一曲目は“Hello”。2ndアルバム『(What’s the Story) Morning Glory?』のトップを飾る楽曲だ。ポール・”ボーンヘッド”・アーサーズ、ゲム・アーチャーがギターをかき鳴らす。アンディ・ベルのベース音もデカい。会場外にも届くほどの音量にファンの感情は爆発し、全力でシンガロングする。ちなみに、日本ではあまり見ない光景かもしれないが、ライブ会場ではそこらかしこにアルコールが売られている。当然ビールの消費量が多いからなのかと思いきや、一滴も飲まず、ただ投げ飛ばすためだけに箱ごと買う人もいて驚いた!1杯1400円ほど。なんとリッチな使い方だろう。一体誰が持ってきたのか?ビールとともにサッカーボールが飛び交う姿が面白くて、呑気に笑っていたところ2階席にいる私の頭上にもビールが降り注いできた。1曲目にして洗礼を浴びたのだった。

“Acquiesce”は、尖ったギターリフから始まるノエルとリアムのツインボーカル曲。オフィシャルビデオでは、日本人が起用されていることでも有名な作品だ。印象的なノエルのコーラス《Because we need each other, We believe in one another》を高らかに歌い上げる。心なしか、彼らも感慨深そうにパフォーマンスを行っているようにみえたが、それはファンにとっても同じだ。16年もの間、私たちが待ち望んだ光景でもあって、リアムがXにて「POTATO(ノエルの顔写真を引用しながら、彼をジャガイモに見立てた投稿)」と揶揄しても(今思えば、リアムの末っ子気質が垣間見えて可愛らしい)、ファンが何度も「バンドを復活してくれ!」とリプライを送っても、ノエルは振り向かなかった。それが、今はどうだ。ツアーがはじまってみれば笑顔の彼がステージに立っている。Live Foreverの精神で生きてみれば、こんな現実を目の当たりにできるのだと、ただ涙をこぼすことしかできなかった。

フロアに響き渡る轟音ギターとベース、破裂するようなドラム音で幕を開けたのは“Morning Glory”。ハードロックを彷彿とさせる“Bring It On Down”、“Cigarettes & Alcohol”は、ジョーイ・ワロンカーのドラムカウントが開始の合図だ。“ポズナン”と呼ばれる、サッカーファンが肩を組みながらジャンプする行為で、ファンは全力シンガロング。どうやら、本公演は1stや2ndを中心とした構成らしい。今回は再結成を記念したライブでもあるから、どのアルバムからも満遍なくセトリを持ってくると考えていたが、見通しが甘かった。バラードを挟むわけでもなく、ノンストップで“Fade Away”、“Supersonic”を繰り出す様は、まさに“爆走兄弟ノエル&リアム!!”。ここに“Roll With It”も加わってくる。うむ、某戦闘民族の王子からセリフを拝借しよう。「まるでヒット曲のバーゲンセールだな…」と呆れ…はしないにせよ、怒涛の展開に心を躍らせるのであった。

そんな中、優しいアコギの音色が響き渡る。ここで来たか!ノエルのメインボーカル曲“Talk Tonight”、“Half the World Away”、“Little by Little”。この頃には会場が夕陽に包まれていて、心地よい風が吹いていた。熱狂していたオーディエンスが変わらずシンガロングするも、先ほどまでとはどことなく雰囲気が違う、ノエル主体の世界観。これは彼の精神世界なのか?生まれ育った環境なのか??ノエルがメインのボーカル曲は、そこはかとなく哀愁が漂っている。あの瞬間、ウェンブリーにマンチェスターの風を感じたのは私だけだろうか。

「ギュイーンギュイン」とヘリコプターからメンバーが降りてくるPVが瞬時に思い起こされるは“D’You Know What I Mean?”。なんと!やってくれるのか!?過去にノエルが好きではないとインタビューで回答した3rdアルバム『Be Here Now』収録曲。ちなみに同アルバムは、若かりし頃のピート・ドハーティ(ザ・リバティーンズ)が発売の列に並んでいたところをメディアに偶然撮影されたことでも有名となるのだが、その話はまた今度にしよう。その後披露された“Stand by Me”は元々メロディの美しさが際立つ楽曲だが、スクリーンの映像も含めてノスタルジックな雰囲気に仕上がっていた。リアムは元々このアルバムが好きだと言っていたし、ノエルの中で同アルバムに対する意識が変化してきたということであれば、個人的には大歓迎だ。何故ならば、私の一番好きなアルバムだから(笑)。“Cast No Shadow”はギャラガー兄弟が、敬愛するアシュクロフトに捧げた楽曲。精神的に追い込まれ、ドラッグに手を出すことを辞められなかったアシュクロフトを何度も励まし続けたという。《As he faced the sun he cast no shadow(太陽に向かっても影は落ちなかった)》というフレーズが、その時バックヤードに居たはずの偉大なミュージシャン=リチャード・アシュクロフトに届いていることを期待しつつ、現実から目を背けて何度も逃げ出そうとする私も号泣していた。

フロアには三世代で来ているファンもいて、オアシスの色褪せない魅力を再認識させられる。“Slide Away”では、若い女の子が祖母や母らしき人とお揃いのオアシスTシャツを着用し、一緒に歌っている様子が印象的だった。“Whatever”はカノン進行とストリングスを採用した日本でも人気の楽曲。《I’d like to be under the sea〜》とそのままザ・ビートルズの“Octopus’s Garden”に突入したとき、『Live at Maine Road’96』の記憶が瞬時に蘇った。序盤で喧嘩勃発。リアムはその場でボーカルを放棄。呆れ果てたノエルが仕方なくボーカルを代わり、“Octopus’s Garden”を歌い始めた時のリアムの悔しそうな顔。ステージで煙草を吸い始めるとは、ある意味「Whatever」を体現した男ではあったが…。「リアム、歌い切ったな。今回はビートルズのアレンジカバーも出来てよかったね。」と、完全にペギー・ギャラガー目線の私であった。

本編ラストに向けて披露された人気曲“Live Forever”が素晴らしかったのはもちろんだが、特筆すべきは“Rock ‘n’ Roll Star”。過去の写真・記事、それらがコラージュされたオアシスの歴史すべてを詰め込んだ映像と、力のこもったパフォーマンスは大規模なエクスプロージョンを起こし、フロアを一気に呑み込んだ。ノエルは生粋のソングライターだし、リアムは兄の“ミューズ”として楽曲を持ち前の歌声できらめかせる。

長いブランクがあったとは思えないほど息ピッタリの演奏を見て、オアシスがロックンロールスターであることを確信したし、兄弟間の決裂は決して無駄なものではなかった。ボーンヘッドの明るさや優しさに助けられている部分もあるだろうが、各々が持つ才能の違いに気づき、「そうだな、今までのことは全て水に流そう。」といった包容力がある大人になったからこそ、今回のベストパフォーマンスにつながったのだ。彼らこそ天に一際輝くシリウスだ。奇跡のようなパフォーマンスが生み出されるのもおかしくはない。スタンディング・オベーションと大歓声に包まれて本編が終了した。

スマートフォンの明かりとアンコールを求める声が鳴り止まない中、ノエルが再登場。アンコール1曲目は“The Masterplan”。来ないと思っていたら、まさかここでやるとは…ノエルも粋な男だ。メロウな楽曲に心を鷲掴みにされながら、ライブではお馴染み“Don’t Look Back In Anger”に続く。この曲は、一部のファン界隈で「イギリス国歌」と呼ばれることもあるくらいのビッグアンセム。どんなシチュエーションでも盛り上がることは必然だ。8万人のシンガロングは音の波である。ユニオンジャックのフラッグを振るファン、曲中にキスをするカップル、涙で顔を滲ませる紳士…それぞれ別の世界があって、応援の仕方も、住んでいる場所もまったく違うけれど「オアシスを愛する者」でつながっている。出し惜しむことなく披露されたロックアンセム“Wonderwall”は当然オーディエンスも完璧な仕上がりだ。喉のコンディションが非常に良いリアムのボーカルに合わせて、全力で歌い続ける。ラストナンバーは“Champagne Supernova”。静かな川の音から始まると、アコースティックギターが主軸となり、少しずつ音が重なっていく。音源だと7分30秒近い大作であるが、全く長く感じない。タンバリンを頭に乗せたリアムが仁王立ちする様は少しカオスで、思わず笑いたくなるが、楽曲終盤では夜空を花火が彩り、流麗なメロディラインとともに夢の世界が広がっていく。今まで観たライブの中で一番といってもいいくらい、感動的なクライマックスだった。

終演後に駅へ向かう途中、オアシスの熱狂から覚められないファンたちが合唱しながら帰ったあの体験は良い思い出だ。列車に乗れば、一人ひとり現実という切符を片手に帰っていく。「家路に向かうこの時間だけは、日常のしがらみから解き放たれたい。明日のことは分からないけど、今日だけは美しい思い出で終わらせよう」と、私も心の声に耳を傾けつつ、笑顔で歌いながら帰還した。

リアムの引き留める声に振り向くことなく、2009年にバンドを去ってしまったノエル。解散後、ノエルが結成したソロプロジェクト、ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ(2010〜)は、“AKA… What A Life!”のようなダンストラックも取り入れたことで、音楽活動の幅を広げた。対してリアムは、ビーディ・アイ(2009~2014)を結成したものの、ブレーンを失ったバンドは活動が低調となり解散。だが、外部からソングライターを迎え入れ、ソロシンガーとしてステージに立ち始めてからは、好調なセールスを連続で叩き出す。歯に衣着せぬ物言いとロックスターな振る舞いは今でも若年層の憧れで、数々のフォロワーを生み出し続けている。私的にも「もし、いまオアシスが再結成することになれば、それは感慨深いのだけれども、バンドの面影を追い求める時期では無くなったのかもしれない。」と考えていた。…そう、あの日までは。

突如としてオフィシャルより現れたカウントダウン。翌日に「銃声が静まり、星が一列に並んだ。長い待ち時間は終わりだ。」という文言とともに再結成&ツアーを発表。Xのトレンドがオアシス関連で埋め尽くされていたのを覚えている。過去の彼らを見てきたファンが「再解散」を疑いたくなる気持ちもわかるが、安心してほしい。オアシスは転換期に突入していることを、ウェンブリー公演で確信している。一番は、ノエルが笑顔を浮かべて時折リアムを見つつ、彼の歌唱力に身を委ねていたこと。さらに、今はリアムのライブへの熱意も桁違いとなっている。リアムは現在も毎日朝早くからジョギングを行い、ライブ前はアルコールを控えているとNMEで語っている。アシュクロフトは『ヴァージン・ラジオ』にてリアムとはステージ上でしか会っておらず、打ち上げで酒に溺れることなく、規律正しく取り組む姿を称賛していた。ノエルも元々音楽づくりへのプロ意識は人一倍高かったように感じるし、リアムが成長していく姿を見て、本当に嬉しかったのではないだろうか。それぞれの修業期間を経た上で、互いに生まれた「兄弟へのリスペクト」こそが、今回の公演成功につながったのだと思う。

だからこそ、改めてこれだけは強調しておこう。オアシスの決裂は決して無駄なものではなかった。

リアムのスキンシップは公演を重ねるごとにパワーアップしているけれども、ノエルも満更ではなさそうだ。東京公演でも戯れ合ってくれるだろうか(笑)。オアシスは10月25日(土)、26日(日)に東京ドームへ凱旋する。チケットは完売してしまっているが、今月末からはチケットぴあによる公式リセールもスタート。歴史の第二幕が開く瞬間を見逃してはならない。

来日公演 公式リセール情報

◆2025年10月25日(土)公演分
 2025年9月25日(木) 00:00〜
◆2025年10月26日(日)公演分
 2025年9月26日(金) 00:00~
※いずれも、チケットぴあ Myチケットより

新規情報及びその他の詳細、各種手数料等については、下記サイトをご参照ください。
> オアシス来日ツアー公式サイト
> チケットぴあ・リセールご利用ガイド

『oasis live ‘25』ライブ音源 最新配信情報

“wonderwall” (Live from dublin, 16 August ’25)

アイルランド ダブリン公演(8月16日)より “Wonderwall” が9月4日より配信開始。
YouTube、各種サブスクリプションにて視聴できるので要チェック!

各種サブスクリプションサービスへのリンクはこちら

Text by Yuika Yamazaki
Photo by  LIM Press