eastern youth | 沖縄 Output | 2019.05.19

経験値と底力で乗り切る

前日、鹿児島の桜島で行われたフェスに出演したeastern youth。5月18日は那覇にあるライブハウス、Outputでライブを行なった。沖縄でのワンマンライブは、2013年の全国ツアー以来。ツアー中ではない時期の、地方でのワンマンライブは貴重である。Incredible Bongo Bandの”Let There Be Drums”のSEとともにメンバーが登場し、じゃがたらの”もうがまんできない”が終演後に流れたのは4月20日に渋谷クラブクアトロで行われた「極東最前線」と同じ。曲数はその「極東最前線」より多く、アンコール2曲を含めて19曲演奏した。

フロアはほとんど男性の観客で占められていた。1曲目の”夏の日の午後”から6曲目の”青すぎる空”までを一気に演奏し、その気迫と爆音、曲に込められた豊かな情感に序盤から圧倒される。吉野寿(Gt/Vo)が「逃げて逃げて逃げまくりましょうよ。勲章なんかいらねえよ」と語って始まった”脱走兵の歌”はかなり久しぶりにライブで演奏された。この曲で歌われる、状況に押しつぶされる前に、逃げてでも生き延びてやろうという姿勢は、本当にしんどい毎日を生きる人にとっては、安易に励まされるよりよほど勇気づけられる。隠れた名曲だ。

“男子畢生危機一髪”の途中、吉野のギターの弦が切れた。eastern youthは普通なら演奏をやりなおすような事態が起こっても、曲を中断させることがほとんどない。吉野は弦が切れたままのギターで、力技で演奏を立て直す。素早い判断は、培ってきた経験値があってこそ。村岡ゆか(Ba)の奏でる緻密なベースラインと、田森篤哉(Dr)の迫力あるドラムのコンビネーションも支えとなり、”男子畢生危機一髪”を最後までやりきった。3人とも冷静で、バンドの底力を垣間見た。

その後、替えの弦がないことが発覚する。珍しい二重のアクシデントだが、吉野は

「この予備のギターの弦が一本でも切れたら、そのときは今日のライブはおしまい。切れないように祈っててくれ……。もし切れたら、それは君たちの念力が足りなかったからだ」

と言ったりして、観客から笑いが起こる。しかしその後も一切手加減なく、無事最後まで圧巻の演奏で乗り切った。熱気が充満し、メンバーも観客も汗だくとなった2時間弱。フロアには終始バンドを歓迎するあたたかい空気があった。

これからしばらくの間、フェスやイベントなどの出演が続くeastern youth。次にワンマン公演が観られるのは、9月28日(土)。17年ぶりに開催される、日比谷野外大音楽堂でのライブだ。

<SET LIST>
01.夏の日の午後
02.砂塵の彼方へ
03.徒手空拳
04.何処吹く風
05.雨曝しなら濡れるがいいさ
06.青すぎる空
07.ソンゲントジユウ
08.脱走兵の歌
09.踵鳴る
10.矯正視力〇・六
11.男子畢生危機一髪
12.素晴らしい世界
13.たとえばぼくが死んだら
14.時計台の鐘
15.荒野に針路を取れ
16.夜明けの歌
17.街の底

E1.DON QUIJOTE

E2.裸足で行かざるを得ない


<eastern youth 日比谷野外大音楽堂公演 開催概要>
2019年 9月28日(土) 日比谷野外大音楽堂
開場 16:45 / 開演 17:30
※雨天決行・荒天中止
前売:¥4,500(全席指定) / ペアチケット:¥8,000(全席指定)
※未就学児童は保護者同伴に限り入場可(小学生以上はチケット必要)
※未就学児童でも座席が必要な場合はチケットが必要です。
詳細: https://smash-jpn.com/live/?id=3150


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Text by Keiko Hirakawa
Photo by Keiko Hirakawa