eastern youth | 愛知 森、道、市場 2019 | 2019.06.02

ひとり戦う者に乾杯

eastern youthが6月2日、愛知県蒲郡市のラグーナビーチ&遊園地ラグナシアで開催されたフェスティバル、「森、道、市場 2019」に出演した。この日のチケットはソールドアウト。同フェスで最高の動員を記録した。

eastern youthの出番前から雨が降り出した。砂浜に建てられたSAND STAGEでの演奏。ステージからは波打ち際が見渡せる。サウンドチェックでは1曲目の「夏の日の午後」のフレーズが、吉野寿(Gt/Vo)と村岡ゆか(Ba)、田森篤哉(Dr)によってゆっくりと鳴らされる。重厚な響き。開始時間の14時40分を迎えてそのまま曲に入り、大きな歓声が上がった。”砂塵の彼方へ”から”青すぎる空”へと、序盤からたたみかける。雨は徐々に強くなってくるが、観客の熱が冷めることはない。

「『社会的価値のない人間は死んでくれ。勝手に人のいないところで死んでくれ。生きとし生けるもの皆、役に立たなきゃいけない』……そういうことらしい。知らねえし。役に立つために生まれてきたんじゃないから。むしろ迷惑かけるために生きてきた。それでちゃんと生きてるし。ダメですか?」

「自分に”それ”があるということは、人にも”それ”があるということ。これさえ分かっていれば、あとはどんなふうに生きようが、何かを言われる筋合いはない。それを”尊厳”というんじゃねえのかよ」

吉野が問いかけ、返ってきた歓声とともに “ソンゲントジユウ”のイントロが始まる。毅然と、絞り出すように歌われるサビが胸を打つ。

観覧車をバックにした開放的なステージで、吉野は決まりが悪そうに語る。

「残念ながら我々はお祭りの祭囃子用の音楽はできないのです。……すまん。お祭り用の乾杯はできんのです。……すまん。ごめんなさい」

「かわりに、ひとり戦う者に乾杯だ」

始まった曲は”時計台の鐘”。歌詞の孤独感と3人の奏でる爆音と、ピースフルでゆるいフェスの空気。その対比が、eastern youthの存在感を際立たせる。”沸点36℃””夜明けの歌”とふたたび代表曲が続く。フェスならではの濃い展開。雨の中でもほとんどの観客はその場にとどまり、最後まで演奏に観入っている。

吉野の「もう一曲だけ。俺たちまた街の底で会おうぜ!」という言葉とともに、ラストは”街の底”。吉野が間奏でステージ中央まで出ていくと、この日最高の盛り上がりが到来した。”街の底”が終わる頃、雨は落ち着いてきた。観客からの惜しみない拍手に送られ、eastern youthは45分間の演奏を終えた。

<SET LIST>
01.夏の日の午後
02.砂塵の彼方へ
03.青すぎる空
04.ソンゲントジユウ
05.時計台の鐘
06.沸点36℃
07.夜明けの歌
08.街の底

Text by Keiko Hirakawa
Photo by Keiko Hirakawa