CHON | 東京 SHIBUYA CLUB QUATTRO | 2020.02.05

奴らは絶対テクニシャン

フジロック3日目、レッドマーキーに登場したCHONはたくさんの人たちを魅了していた。そのライヴが終わったときに今回の来日公演のアナウンスがあって、約半年。待ちに待って再び彼らをみることができた。

渋谷クアトロは満員。始まる前にステージから、混雑しているのでフロアにいる人たちはもう一歩前に進むように促されたくらいだった。客層は大学生くらいから30代の男が多いけど、思ったよりは女性もいる。ギターマニアみたいな人もいる一方で、フェスによくいってそうな人が多い雰囲気がある。

19時12分、会場が暗転してバンドが現れる。ステージ下手にギターのマリオ・カマレナ、上手に同じくギターのエリック・ハンセル、ステージ後ろにドラムのネーザン・カマレナ、後ろの少し高いところにベースのエザヤ・カマレナがいる。“Bubble Dream”からライヴは始まった。

マリオとエリックの超絶技巧のテクニックがアタマから繰りだされて、満員のフロアからは歓声が上がっていく。ギターだけでなく、ネーザンのドラムはステージの近さもあって生々しい迫力とともに、一筋縄ではいかない変拍子を生みだす細かいドラミングがフジロックのときよりも堪能できたし、エザヤのベースもギタリストのようなタッピングを披露してバンド全体がテクニシャンであることをみせつける。

しかし、テクニック発表会になりがちなヘヴィメタルやフュージョンと違って、曲が短くてサクサク進行するのと、なんとなく踊れる、体で乗ることができるのが、新感覚と呼ばれるゆえんなのだろう。

配信などでレコーディングされた曲を聴くと、演奏は複雑なのに感触はシンプルで、クリアめなトーンのせいかカラッとしていてさわやかな印象を残す。朝霧JAMのときも、フジロックのときも大きなイメージは変わらないのだけど、今回は密室感あるライヴハウスだったので、ドラムを中心にしっかりとしたリズムの重さも感じることができた。そこが単独ライヴだからこその体験だった。

“Story”や“Pitch Dark”のような曲にはひときわ大きな歓声が上がる。本編が終わったあとに熱烈な拍手が沸き起こる。アンコールで再びステージに立ち、まず“Can’t Wait”。この日唯一のヴォーカル入りの曲だった。フロアからはシンプルな歌詞を一緒に歌う人の声が聞こえてきた。

そして最後は“Perfect Pillow”。彼らの定番となる曲で、イントロから大歓声が上がった。クライマックスは最後の最後に用意されていたのだった。多少のMCもあったけどアンコールも含めて約1時間10分のほとんどはマリオとエリックのすばらしいプレイだった。これだけ繊細なギタープレイを繰り広げたのに、ギターを交換したり、チューニングしたという印象がなく、ひたすらプレイに徹していたのだった。曲は短いけれども、ライヴ全体を通して聴くと、まるで1時間10分が1曲のように感じられたし、複雑なリズムなのにグルーヴを生みだし、テクニックに関して新たなあり方を切り開いたバンドの姿を堪能できたのである。

<SET LIST>
01.Bubble Dream
02.Story
03.Petal
04.Ghost
05.Cloudy
06.Visit
07.Book
08.Knot
09.Puddle
10.Elliptical Illuminations
11.Newborn Sun
12.Intro/Peace
13.Rosewood
14.Pitch Dark
15.Sleepy Tea
16.Waterslide

En.1 Can’t Wait
En.2 Perfect Pillow

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Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Keiko Hirakawa