まず、前に進むために
コロナウィルス以前、以後で世界が変わってしまった。いつ元に戻るのかわからないのだから、コロナ前がよかったといっても仕方ない。ミュージシャンもファンも前に進むしかない。なので50回転ズはアコースティックツアーにでることにした。お客さんたちが近くならないように間隔を開け、入場時には検温、マスクを着用し、声を出さず、（この日は）アルコールも摂らず、座ってステージを観る。縦ノリの曲も多く、モッシュやタイヴが起きることもある50回転ズにとってハンデになるだろう。
会場の大阪城野外音楽堂は大阪城公園の一角にあるキャパシティ約3000人の野外音楽堂で、ステージの大きさや木々に囲まれた雰囲気、大きな公園の一角にあるというロケーション（しかも割と駅に近い）は東京の日比谷野外音楽堂に似ている。
お客さんは2～3席くらい間隔開けて座り、ライヴが始まる17時30分ころには、それなりに埋まった。まだ空は明るく、セミの鳴き声が会場を包んでいる。5分くらい押して、まず「50回転ズのテーマ」の初期ヴァージョンがフルでかかったあと、恒例のドクター・フィールグッドの“Riot in Cell Block Number 9”が流れて3人が登場する。彼らにとってアコースティック・ライヴは初めてというわけではない。
なので、演奏面では安心感があった。ただ数カ月ぶりに人前で演奏することの不安、そしてコロナウィルスの感染者が増え続けているという状況が影を落としている。
「レッツゴー3匹!!!」から始まったライヴは、まるで「昨日も別の街で演ってきたよ」と言わんばかりに自然と馴染んでいたので、数カ月の空白の心配は杞憂に終わる。ダニーのアコースティック・ギター、ドリーのウッドベース、ボギーの今回のセットに合わせたドラムが楽しく、ワクワクする時間の始まりを告げた。
お客さんたちは声をだしてはいけないので、代わりに鳴り物を持ってきている人が多かった。タンバリン、カスタネット、柄杓、バルーンスティックなどなど。持ってない人は拍手で気持ちを示していた。さすがにみんなマナーがよく、着席を守ってたし、トイレ以外で席を離れることもなかった。
アコースティックセットに合わせた選曲だったので、ハードに攻める曲、スピード感のある曲、縦に乗る曲よりは、メロディが生きる曲が多い。アコースティックなアレンジでも印象が変わらないものもあるし、ガラッと変わるものもあった。ジャズやカントリーを感じさせる新鮮なアレンジは彼らの引き出しが多いことを示したのだった。
その「多彩な引き出し」は「エイトビートがとまらない」でのベースを聴いたときに、ハッと気がついた。今回は音量のバランスなのか、ドリーのベースがよく目立っていて「エイトビートがとまらない」にジャジーな要素が加わっていたのである。今回のサウンド面での主役はウッドベースだった。一方、ダニーはアコースティック・ギターが基本だけど、後述の三味線、バンジョーの他にも2曲くらいエレクトリック・ギターも使い飽きさせない工夫が随所でみられた。
「チンピラ街道」はダニーが三味線を持ち、ザ・サファリーズがオリジナルでベンチャーズなどで知られる「ワイプ・アウト」を弾く。中盤のカヴァーコーナーでは、「唯一のヒット曲」である「ゲゲゲの鬼太郎」、ダニーがチャック・ベリーの「Thirty Days」、ドリーが高田渡の「銭がなけりゃ」をカヴァー。冒頭でダニーはバンジョーを持ち、映画『脱出』のサントラに納められている「デュエリング・バンジョーズ」を弾くという遊びをみせた。ドリーは後半の歌詞を「大阪はいい所さ/住むなら大阪城に決まってるさ」と変えていた。ボギーが小林旭の「自動車ショー歌」を歌う。
しっとりとしたムーディな曲になった「デヴィッド・ボウイをきどって」、ボギーがコンガを叩いた「涙のスターダスト・トレイン」この2曲は、コロナ自粛期間中に作られたミニアルバム『MAGICAL ACOUSTIC SESSIONS』に収められている（他に「レッツゴー3匹!!!」と「エイトビートがとまらない」が収録されている）アコースティックによって柔らかい印象になった。だんだん暗くなってきた野外音楽堂の雰囲気にもちょうど合っていた。
定番「Vinyl Change The World」、カントリーバラード「故郷の海よ」、いつもは縦ノリだけど、歌いやすいメロディのよさが際立つアレンジとなった「YOUNGERS ON THE ROAD」、本編ラストは「おさらばブギウギ」であった。「おさらばブギウギ」恒例のコール&レスポンスは声をだせない代わりに、鳴り物や拍手でバンドに応えていた。踊れないし、やり辛いとは思うけど、それを逆手にとって楽しく仕立てることができるのは50回転ズらしい。ダニーはステージ上を動き回る。制限がある中で、できる限りいつも通りやろうと奮闘していた。
アンコールの拍手が沸き起こり、メンバーがステージに戻って「NO NO NO」と「ぼちぼち帰ろ」を演奏した。「ぼちぼち帰ろ」はのんびりと締めくくる映画のエンドロールのBGMとして流れるような曲である。すっかり夜になってお客さんたちは、余韻を抱きつつそれぞれと帰っていった。
そして50回転ズはツアーにでる。今回のようなアコースティックセットで全国を回るのだ。今後どうなるか先がみえない中で、ひとつの答えをだす試みである。アコースティックによってバンドの新たな魅力が引きだされているので、是非観にきてほしい。会場では『MAGICAL ACOUSTIC SESSIONS』も販売されるのでゲットしよう。そして、いつか「ここ（大阪城野外音楽堂）で爆音でやりたい」を実現してほしい。
［SET LIST］
1.レッツゴー3匹!!
2.たばこの唄
3.エイトビートがとまらない
4.女のひとり酒
5.チンピラ街道
6.Trip!Trep!
7.ホテルカスバ
8.ロックンロール・ラブレター
9.ゲゲゲの鬼太郎
10.Thirty Days
11.銭がなけりゃ
12.自動車ショー歌
13.デヴィッド・ボウイをきどって
14.涙のスターダスト・トレイン
15.Vinyl Change The World
16.故郷の海よ
17.YOUNGERS ON THE ROAD
18.おさらばブギウギ
EN1.NO NO NO
EN2.ぼちぼち帰ろ
▼公演情報『Magical Acoustic Tour』
8/29（土）高松DIME
1st STAGE OPEN14:45/ START 15:30
2nd STAGE OPEN17:15/ START 18:00
高松DIME
http://www.dime-dime.com/index-pc.html
デューク高松
TEL087-822-2520
http://www.duke.co.jp
8/30（日）福岡CB
1st STAGE OPEN14:45/ START 15:30
2nd STAGE OPEN17:15/ START 18:00
福岡CB
https://www.livehouse-cb.com/
BEA
TEL092-712-4221
https://www.bea-net.com/
9/5（土）札幌PENNY LANE24
1st STAGE OPEN14:45/ START 15:30
2nd STAGE OPEN17:15/ START 18:00
札幌PENNY LANE24
http://www.pl24.jp/
SMASH EAST
TEL011-261-5569
http://smash-east.com
9/13（日）岡山CRAZYMAMA KINGDOM
1st STAGE OPEN14:45/ START 15:30
2nd STAGE OPEN17:15/ START 18:00
岡山CRAZYMAMA KINGDOM
http://banquetunion.com/kingdom/
キャンディープロモーション 岡山
TEL086-221-8151
http://www.candy-p.com/
9/21（月・祝） 愛知 伏見JAMMIN’
1st STAGE OPEN14:45/ START 15:30
2nd STAGE OPEN17:15/ START 18:00
愛知 伏見JAMMIN’
http://jammin.l.c-o-a-l.jp
サンデーフォークプロモーション
TEL052-320-9100
http://www.sundayfolk.com/
9/22（火・祝） 神戸VARIT.
1st STAGE OPEN14:45/ START 15:30
2nd STAGE OPEN17:15/ START 18:00
神戸VARIT.
http://varit.jp/
サウンドクリエーター
TEL06-6357-4400
http://www.sound-c.co.jp/
9/26（土）京都磔磔
1st STAGE OPEN14:45/ START 15:30
2nd STAGE OPEN17:15/ START 18:00
京都磔磔
http://www.geisya.or.jp/~takutaku/
サウンドクリエーター
TEL06-6357-4400
http://www.sound-c.co.jp/
詳細はオフィシャルサイトをご覧ください
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