KING BROTHERS | 兵庫 神戸VARIT. | 2021.01.10

生ライブと配信ライブという盤石の両輪

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、関東において緊急事態宣言が行われた週末の1月10日(日)、サーキットイベント「KOBE Goodies Collection -Rock’n’Roll Circus-」が神戸VARIT.、CHICKEN GEORGE、ART HOUSEの3ヶ所で開催された。会場の入り口で体温計測、追跡システム登録を済ませると、パス代わりの黒いマスクが渡された。会場を行き来するイベントで入場時に公式マスクの着用を義務付けるというアイデアがいい。フロアには立ち位置を示す足型が間隔を開けて並んでいた。この足型の数が、会場の定員数となっている。

タイムテーブル通りに有客と配信でライブが行われていたこの日、大トリの忘れてモーテルズ前、唯一生音無配信でライブをしたのがキングブラザーズだった。去年6月21日バリットで配信された時と同様、2Fのバーカウンター前でのライブだ。ステージから2mの位置に白線が引かれている。メメタァのライブが終わると、他会場から観客が流れてきた。あっという間に2階は満員で、スタッフに誘導された1階も間も無く定員となり、バリットに入場規制がかかった。

「キングブラザーズ行きます!」ケイゾウ(Vo/Gt)のいつものシャウトから始まった”King of Boogie”で、バンドはゆるやかなうねりから大きなグルーヴへスピードを上げていく。「ロックンロール好きですか?今日はこの白線から前に来れない!多分これくらいはいけるんちゃうかな?」とマーヤ(Gt/スクリーム)は床に貼られた境界線を1人分広げた。マーヤのスクリームが1つの楽器となってより大きなスケール感を生んで行く。

続く“ACTION!!!!”では、暗がりに灯された1つの明かりに揺らぐケイゾウの動きを観客は食い入るように見ていた。3ピース、3つの楽器、マーヤのスクリームとケイゾウのシャウト、冷たく刻まれるゾニー(Dr)のマラカスが緊張感を絶妙に操っていく。演奏がピタリと止まり「だからめちゃくちゃにしてやるんだよ!」とケイゾウが憎々しげに叫ぶと観客のテンションは一段とヒートアップした。

コロナ禍を生き抜く中、”-UFO-“、”ぶっ壊せ”の2曲を発表した彼らは「頑張ろう」という言葉を軽々しく使うことなく、キングブラザーズという存在だけで見る者にパワーを漲らせる術を知っている。時間の関係で”ロマンチスト”の途中で”マッハクラブ”に切り替えたバンドは、ライブを体感することで得られる何かを、突発的な瞬間が持つ力を信じていたのだろう。「まだまだロックンロールは鳴っているぜ!時間の許す限りキングブラザーズを体感していってください」とマーヤが叫ぶと、ケイゾウとゾニーはマーヤとの距離を縮め手加減のない音を鳴らした。ケイゾウの合図でマーヤは「初夢の続き!世界中が思っている「コロナウィルス、ファックユー!」と吐き捨て、終盤に向け、まさにバンドという集合体のパワーとスリルあるパフォーマンスを見せた。

翌日の1月11日(月)にキングブラザーズは、グッズなどを制作している地元西宮市の工場でのライブ配信『LIVE at GOODS FACTORY』を開始した(〜1月25日までアーカイブ配信中)。地下の工場、コンクリート壁にダンボールが積み上げられた中でのライブというシチュエーションはさながら映画のようだ。ライブバンドがただ場所を変えてライブを行なっている、と思うなかれ。根底に流れているロックンロールスピリッツはそのまま、静謐な空間に対峙しているバンドは静かに燃える青い炎のようで、深みのある演奏は時折大きく盛り上がる瞬間を挟みながら続いていく。マーヤとケイゾウのシャウトは画面ギリギリを攻め、一挙手一投足その気迫ごと映しこまれている。配信の後半は、スーツにエプロン姿のメンバーがシルクスクリーン印刷に挑戦する。普段なかなか見られないアーティストグッズの制作をメンバー自ら行うというファン垂涎の映像と仕上がっている。

ライブと配信、その両輪で終わりの見えないパンデミックを進むキングブラザーズ。この世界線だからこそ体感できる瞬間に、これからも期待したい。

▼配信情報:『LIVE at GOODS FACTORY』
視聴期限: 2021年1月25日(月) 23:59 まで、TwitCasting にてアーカイブ配信中。

<SET LIST>
01.King of Boogie
02.ACTION!!!!
03.-UFO-
04.ぶっ壊せ
05.ロマンチスト
06.マッハクラブ

今後のライブ予定詳細はキングブラザーズ オフィシャルサイトにてご確認ください。

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Text by Tomoko Okabe
Photo by Tomoko Okabe