eastern youth | 沖縄 Music Lane Festival | 2021.2.21

緩急豊かに駆け抜ける

沖縄県那覇市と沖縄市で同時開催された音楽フェスティバルMusic Lane Festival Okinawa 2021にeastern youthが出演した。1日目は那覇市の桜坂セントラルでライブを行い、2日目の2月21日は沖縄市コザにあるライブハウス、ミュージックタウン音市場のステージに登場した。

開演時間の16時30分。この日のライブはオンライン配信されていたが、吉野寿(Gt/Vo)は開口一番、「面白すぎるからやめてもらえる?」と笑いながら客席に語りかけた。吉野の視線の先、最前列に座っていた男性客が、スケッチブックにバンドへの声援を書いて、ステージに示していたのだった。

「もうみんなで『喋るな喋るな』っていうから、ついに声援が筆談になってきました」と観客の苦肉の策に苦笑しつつ、「なんかすいませんね、みなさんも気が詰まるでしょうけど、まあ、せっかくいい機会ですからのんびり聴いてください。観やすいでしょう? こっちからも見やすいです。ひとりひとり、名前を呼べるくらい。短い間ですけど、どうぞお付き合いください」と語って空気が和む。村岡ゆか(Ba)と田森篤哉(Dr)に向かい合った吉野の「やるかー!」のかけ声とともに、1曲目の”今日も続いてゆく”が始まった。

渋谷O-EASTと同程度の広いフロアに等間隔に椅子が並べられ、ステージと客席の間も大きくスペースが取られている。フロア後方から眺めると、照明に照らされたメンバー3人だけが暗闇に浮かんでいるようだ。2曲目は”ソンゲントジユウ”。冒頭2曲とも、観やすく贅沢な環境のなかでじっくり曲と向き合うと、彩りにあふれた音圧と、ドラマチックな曲の構成に引き込まれる。曲が終わると、暗いフロアから拍手だけが返ってくる。

「大丈夫よこの雰囲気。全然大丈夫。場数踏んでるからね。キャパ2000人くらいのところで5人だったことありますからね。それも中学生みたいなやつばっかり。全員サインしましたよ、アメリカで。客ゼロっていうのも何度もあります。メンバーより客のほうが少ないとかね。楽勝ですからね」

那覇からコザへ向かう道中、浦添市を抜け、宜野湾市の普天間飛行場近辺から、アメリカの道路沿いのような低層の角ばったコンクリートの建物が目立つようになる。異国情緒のある車窓の風景に影響されたのか、吉野は20年くらい前にツアーでアメリカを巡ったときの光景と、このライブを重ね合わせたようだ。

「昨日も俺は気づかなかったけど人に聞いた話で、前方でうなだれて、ああ感極まって聴いてくれてるのかなと思ってたら、寝てたらしいですわ。お酒をたくさん飲まれたようで。いいんですよ、寝ても。眠れるもんなら、寝てみやがれ。……中継があるんでしたね、迂闊なことは言えませんな。チャーック!」

3曲目の”踵鳴る”以降は、MCなしで駆け抜けた。”青すぎる空”、”素晴らしい世界”、そしてラストは”裸足で行かざるを得ない”。文句なしの名曲揃いだ。緊張感を保ちつつ、緩急豊かな運びの演奏で、40分間があっという間に感じられた。しかも、前日の桜坂セントラルのライブと異なるセットリストで、ライブを両日観ることができた観客は運がいい。この日のライブを配信で視聴したファンにも、3人の熱演はまっすぐ届いたはずだ。

いまのところ、eastern youthの次のライブの日程はアナウンスされていない。再び彼らのライブを観られる日がいっそう待ち遠しくなるような、充実の2日間だった。

<SET LIST>
01.今日も続いてゆく
02.ソンゲントジユウ
03.踵鳴る
04.青すぎる空
05.素晴らしい世界
06.裸足で行かざるを得ない

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Text by Keiko Hirakawa
Photo by Keiko Hirakawa