KING BROTHERS | 兵庫 ONE MUSIC CAMP | 2018.8.25

世代を越え、刻まれた爪痕

兵庫県の山あいにある三田アスレチックで毎年行われているONE MUSIC CAMPは、ライブとキャンプが楽しめるのはもちろんのこと、プールがあるので泳ぐことも、BBQも出来る。8月25日に開催されたこのフェスティバルに、地元アーティストの1組としてキングブラザーズが出演した。直撃した前日までの台風の影響もなく、ソールドアウトした会場にはその恵まれた立地から親子連れが目立った。

18時40分過ぎバンドが登場する。出演者イチであろう爆音が、マジックアワーの美しい群青の空を突き抜けていく。26インチのバスドラから打ち出されるゾニー(Dr)の打音が始まりを告げる狼煙であるかのように、会場に散らばっていた観客を集めていた。ロックンロールの継承者然とした揺るぎない姿勢で、ケイゾウ(Vo/G)が緩急をつけた歌で観客に火を着けていく。そんな問答無用の1曲目の“ルル”でマーヤ(G/スクリーム)はステージ前方の集団に飛び込んだ。共に「ニ・シ・ノ・ミ・ヤ」を嬉々とした顔で叫ぶ者もいれば、出身地を連呼する不思議さにあっけにとられている者もいる。

「ロックンロールは1ミリでも前にきた方がいいぜ」そう叫ぶケイゾウをかぶりつくように見ていたのは大人だけではなかった。肩車され、手を繋がれた子供達も目を丸くしながら3人を凝視していた。「ロックンロールってどんな感じですか?気持ちいい?」その声で「イエー!」と答えながら上げた小さな拳を見て、周りの大人たちはなんだか誇らしげだ。

ケイゾウのMCのような歌のような言葉は、バンドのみならず観客を含むその場の舵を取っていた。「行くぜキングブラザーズ」を連呼し、煽りながら会場の熱気を巻き上げていった“The Machine”から“Sympathy For The XXXXX”の流れでは、ゾニーと向き合ったマーヤのビートとリフが更に船脚を早めた。

見るとケイゾウの足元では、見上げたその瞳を輝かせながらエアーギターをかき鳴らす小さな男の子がいた。マーヤを担ぐ男たちと同じ目であることに、メンバーは気づいていただろうか。最初は、盛り上がる前方集団を見守っていた後方の観客も、“マッハクラブ”では嬉々として渦の中心へと飛び込まずにはいられなくなる。格好いい場所に連れて行けと、担がれながら指示を出すマーヤが言い放った言葉がその理由を明らかにしていた。

「ステージはそんなに格好よくないぜ、お前らのいるフロアこそロックンロール!」

 

<SET LIST>
01.ルル
02.☆☆☆☆
03.KILL YOUR IDOR
04.The Machine
05.Sympathy For The XXXXX
06.No! No! No!
07.No Want
08.Bang! Blues
09.マッハクラブ

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Text by Tomoko Okabe
Photo by Tomoko Okabe