1年で何が変わったか
LAUV(ラウヴ)は去年3月に来日公演をおこなっている。そのときも「次のスターの予感」というタイトルでレポートしたけれども、1年経ってどのように変化したのか。
満員の赤坂ブリッツは女性比率と外国人比率が高い。おそらく平均年齢も低めで、普段自分がいくようなライヴと違う雰囲気がある。
まずは、オープニングとしてbülow(ビューロー)が登場する。ドイツ出身オランダ在住の女性シンガーソングライターである。現在20歳。登場から歓声を浴びていたので、人気があることがわかる。帽子(ベースボールキャップ?)とTシャツというシンプルな格好で、キーボードとドラムの奏者のみ、ひとりセンターに置かれたマイクスタンドに向けて歌う。
打ち込み音源+生楽器でヒップホップやR&Bに則った曲を演奏する。リズムは太くて重い。サンプリング音源やシンセサイザーのアレンジが派手というかドラマティックな感触がある。ギターが入っている曲もあるけど、これはカラオケ状態。女の子たちの歓声を浴びていたので、やはり同性からの支持があるのだろうか。
ドラマーとキーボーディストがスマートフォンのライトを点けることを促し、フロアのお客さんたちが一斉に光を放って明るくなる。”You & Jennifer”で「あなた」とジェニファーへ「F**K」と言い放つように遠慮なく本音を吐露する。最後は”Not a Love Song”で締めた。Lordeがでてきたときのような新しいアーティストが育っていくプロセスを目撃しているようなステージだった。
セットチェンジのときにEd Sheeran & Justin Bieberの”I Don’t Care”が流れただけで歓声が上がるという温まり方で20時ころLAUVが登場する。大歓声の90%が女声だ。ステージ奥には2つのブースがあり、それぞれにドラムセットとキーボードセットが置かれている。サポートのミュージシャンがそこに入って演奏する。キーボーディストはギタリストも兼ねる。
“Drugs & The Internet”で始まったライヴは、曲が始まるごとに歓声が上がり、ほとんどの曲で合唱が起こっていた。外国人や英語を使える女の人が熱心なファンであることがわかる。LAUVもみんなが合唱しやすいところではマイクをフロアに向けるようにお客さんへの煽りも身につけて慣れている。ギターを弾いたり、機材を操作する曲もあるけど、印象に残るのはマイクを手にステージをめいっぱい使って動き回り、ステージから降りてPAブースの方で1曲歌ったりもした(2階からはみえなかったけど)。
1年の間にミュージシャンとしてエンターテイナーとしてここまで成長したのかと、その早さに目を見張る。赤いシャツを着て、髪型も髪の毛の色も変わり、ステージでの振る舞いは去年よりもスターになっていた。
ムードある”Paris in the Rain”、変拍子でプログレッシヴかつポップな”Paranoid”、フロアがジャンプしたDJ Snakeとの曲”A Different Way”、約1時間20分のライヴのなかで緩急あり起伏あり、全く飽きさせない。
エレクトロやR&B的な味付けがあるけど、基本にフォークやカントリーぽさも垣間みれて、それらをひっくるめてポップと呼ぶのがふさわしい音楽である。”Easy Love”でのシンプルながら味わいあるギターソロを聴くと、アメリカの豊かな音楽的土壌のなかで素直に育っている感じが伝わってくる。そしてなんといってもメロディの美しさとLAUVの声が絶妙に優しくてクールで聴く者の情緒を刺激するのだ。それが遺憾なく発揮されたバラード”Breathe”や本編ラストとなった”The Other”は堂々とした風格を備えている。
そしてアンコールは”I Like Me Better”。去年と同じくイントロを細切れに流してじらしてから演奏に入っていく。大歓声で大合唱となる。この会場に満ちたパワーを感じたら、次はもっと大きなところでのLAUVを観たくなる。この日の会場にいた人たちはその過程を体験しているのだ。
<SET LIST>
Drugs & The Internet
Paris in the Rain
Paranoid
Reforget
A Different Way
Come Back Home
Chasing Fire
The Story Never Ends
Superhero
Easy Love
Enemies
Bracelet
I’m So Tired
The Sims
Adrenaline
I Don’t Care(Ed Sheeran & Justin Bieber cover)
Breathe
The Other
Encore:
I Like Me Better
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