ザ50回転ズ | 東京 キネマ倶楽部 | 2021.05.15

やっぱりこれだぜ!

この日の東京キネマ倶楽部はフロアに椅子が置かれてほぼ満席だった。サブステージにDJブースが置かれていて50~60年代あたりのR&B、ジャズ、サルサ、スカなどが流れていた。50回転ズは早い時間に登場する。いつものようにドクター・フィールグッドの“Riot in Cell Block Number 9”が流れてボギー、ドリー、ダニーの順にステージへ。ボギーのドラムの「ダンダン、ダ、ダ、ダン!」というフレーズであの曲から始まるのだということがわかる。この日のライヴはベイ・シティ・ローラーズの“Saturday Night”のカヴァーから始まった。

軽快なビートに乗せてダニーのエレクトリックギターが鳴らされたとき「50回転ズはやっぱりこれだよな」と感じた。昨年おこなわれたアコースティックツアーは、50回転ズの音楽的背景の豊かさ、曲のよさが浮き彫りになり、50回転ズの魅力を引き出していたのだけど、激しいビートにノイジーなエレクトリックギターを聴くと気持ちが高揚するのだった。

続いてドリーが歌う「サンダーボーイ」、楽しいケルティック(アイリッシュ)パンクの「レッツゴー3匹!!」、明るくノスタルジックな「夢見るタイムトラベラー」、ボギーが歌うハードな「夜明けに走れ」、ドリーによるポップなパンク「1976」と盛り上げる。盛り上げるといってもお客さんたちは椅子に座り声をださずに拍手と身振りで、バンドの熱演に応えていた。

そこに、この日の対バン相手であり、50回転ズの先輩のザ・ニートビーツのMr.PANが登場する。ダニーと掛け合い漫才のようなやりとりをおこなう。そのときに立ってもいいとお客さんたちに呼びかける。するとほとんどの人が立ち上がる。以降は、声はださないなどマナーは守りつつ自分の座席で踊るようになった。

Mr.PANが去り、お客さんが立ったままで演奏されたのは、テンポを落としたバラード「サムクックがきこえる」だった。そこからは一転テンポのよい曲の連打。“Vinyl Change The World”“YOUNGERS ON THE ROAD”「ロックンロール・マジック」と駆け抜け、「おさらばブギウギ」は無言だけど拍手でコール&レスポンスの代わりとした。ここで本編は終わるのだけど、もう一曲「キャップ革命ボトルマン」を演奏した。webアニメの主題歌であり、50回転ズらしいポップなロックンロールに仕上がっている。この日はこの曲のカセットテープが物販で販売されていた。

DJがかけるトラッシュメンの“Surfin’ Bird”に合わせて踊りながらダニーはステージを去っていった。

ザ・ニートビーツのタイトなロックンロールが繰り広げられたライヴを挟んで、50回転ズはロカビリーセットとして2回目の登場である。衣装もロカビリーを意識したものに変え、髪もリーゼントできめているので別のバンドをみているかのよう。ドリーはウッドベースを弾き、ボギーはスタンディングでドラムを叩く。

まずはチャック・ベリーの“Thirty Days”。何回か演奏されている曲で軽快に決める。ドリーの“Trip! Trip!”を経て、沢田研二によるロカビリー曲「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」をボギーが歌う。「元祖メガネロック」としてバディ・ホリーの“Peggie Sue”、ビターな味わいのある「ホテルカスバ」、最後はスコットランド民謡でビートルズも演奏した“My Bonnie”で締めくくる。普段演奏している曲もあったけど、50回転ズによるロカビリーセットはいつもとは違う姿をみせてくれた(一方、ニートビーツはメイクして髪の毛を染めてパンクセットを演奏し、これも楽しかった)。やはり思いっきり伸び伸びと演奏する姿が一番である。まだまだ制約ある状況だけど、その中で懸命なプレイに胸打たれるのだった。

1.Saturday Night
2.サンダーボーイ
3.レッツゴー3匹!!
4.夢見るタイムトラベラー
5.夜明けに走れ
6.1976
7.サムクックがきこえる
8.Vinyl Change The World
9.YOUNGERS ON THE ROAD
10.ロックンロール・マジック
11.おさらばブギウギ
12.キャップ革命ボトルマン

Rockabilly set

1.Thirty Days
2.Trip! Trip!
3.ス・ト・リ・ッ・パ・ー
4.Peggie Sue
5.ホテルカスバ
6.My Bonnie

Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by おりのたんす