ソラリズム「花まつり」 |東京 多摩あきがわ ライブフォレスト@深澤渓 自然人村 | 2022.04.10

桜舞い散るフェスティバル

あきる野市のキャンプ場、深澤溪・自然人村にある多摩あきがわLive Forestで『ソラリズム「花まつり」』というイベントがおこなわれた。「多摩あきがわLive Forest」は木々と川に囲まれたキャンプ場にステージを設けて小さな野外フェスとして2020年春から段階的に開催されている。

自分は2020年8月に開催された「#ライブフォレストフェス -森と川と焚火の音楽-」にもいったことがあり、この場所は2度目の訪問である。

この日は晴れて気温も上がり、日中は暑いくらいだった。木々に囲まれた会場の新緑が芽吹いていた。日が暮れると少し寒くなったので、念のために防寒になるものを鞄に入れておいた方がよいと思った。

前日にはソラリズム「野外ライブハウス LOFT」というイベントがおこなわれていて、SUGIZO、清春、トシロウ、佐藤タイジなどが出演していた。この日の出演者とは佐藤タイジ以外はテイストが異なり、この場所の幅の広さを感じさせる。木製のステージはこの2日間のイベントに合わせて新設されて、以前のステージよりも大きくしっかりとしたものになっていた。暗くなると照明も効果的なものになり、より活用が期待できる。

武蔵五日市駅からシャトルバス(500円)が今回は運行されていて、それを利用して着くと、ちょうどライヴが始まるところだった。まずはオオヤユウスケがエレクトリックギターでフレーズを弾いてループを作りさらにギターの音を重ねてアンビエントな曲を演奏したり、穏やかな弾き語りをおこなう。演奏中に桜の花びらが舞ってステージに降りかかる。以前、Polarisを観たときに満天の星空だったことがあったけど、自然との偶然に恵まれているようだ。ビートルズの“Free as a Bird”をカヴァーしたり心地よい時間を過ごせた。

この会場から徒歩10分くらいのところに「花まつりステージ」が設けられていた。そこまでの道は、都心ではピークを過ぎた桜が満開だし、水仙やツツジやいろんな花が咲き誇っていた。2020年の夏とこの日しか来たことないけど、新緑とあわせてこの辺りのベストシーズンは今なのではと思った。イベント名「花まつり」とはお釈迦様の誕生を祝う「花まつり・灌仏会」が4月8日におこなわれるので、その日に近いというのと、この近辺が花盛りになるのという意味が込められているのだろう。「花まつりステージ」ではbirdがギタリストと2人ゆったりとした時間を作っていた。こちらにたくさんの人が来ているということは、メインの会場は閑散としているということなので、早めにメインの会場に戻り食事をすることに。

会場にはキッチンカーが3台来ていて、それぞれお酒やソフトドリンク、ラーメン、クジラ肉料理をだすものだった。自分はラーメンを食べてみる。ステージの後ろは河原に降りて、バーベキューなどができるようになっている。テントサウナもあったけど、やった人はいるのだろうか。

勝井祐二&Yaeはヴァイオリンとヴォーカルの即興によるコラボレーション。勝井のヴァイオリンがアンビエントな音像を作り、Yaeの声が生命を与える。メロディが沖縄音楽ぽい民俗音楽で周りの自然と調和する。途中は2人のトークショーかと思うくらい長めのMCがあって、この会場の思いなどを語っていた。

奇妙礼太郎はアコースティックギターでの弾き語り。優しくパワフルな声に圧倒される。はっきりと輪郭を持つ歌が会場に刺さると同時に会場を包む。ザ・フォーク・クルセダーズの「悲しくてやりきれない」をカヴァーする。

暗くなってこの日のトリはbonobos。このステージでフルのバンドを観ることができた。場所柄、どうしてもアンビエントやアコースティックな出演者が多いけど、フルのバンドでしっかり演奏を聴くとこのステージのポテンシャルがわかる。自然の中で聴き応えのある音を浴びるとこのステージにはまだまだ可能性があると思った。このような「太い音」の出演者ももっと観てみたい。bonobosは、すでに1年後の解散が決まっているのだけど、悲壮さや手詰まり感が漂うことなく、新曲も披露され楽しいステージをみせてくれた。アンコールには奇妙礼太郎を迎えてフィッシュマンズの「いかれたBaby」をカヴァーする。参加者の世代なのか座っていた人たちも立ち上がり踊っていた。非常に盛り上がって締めくくったのだった。

19時30分頃に終わり、帰りは武蔵五日市駅まで20分くらい歩いた。この場所は今後もイベントが予定されていて、おそらく秋までは使われるのだろう。武蔵五日市から徒歩20分というと「すごく遠い」と思われるかもしれないけど、東京西部に住んでいる人ならばサマーソニックで幕張にいくよりは近い。しかも長野県などの山奥に数時間かけていかなくても自然に囲まれた環境が都内で味わえるのだ。まだまだ可能性がある場所を多くの人たちに味わってもらいたい。

Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Nobuyuki Ikeda