eastern youth | 東京 SHIBUYA CLUB QUATTRO | 2019.12.08

今日は、今日の歌を

12月8日、eastern youthは渋谷クラブクアトロで主催イベント「極東最前線」を開催した。今年最大のトピックであった9月28日の日比谷野外音楽堂でのワンマンライブから2ヶ月半が経過した。4月以来、そして年末恒例の「極東最前線」となる。

ほぼ満杯に埋まったフロア。メンバーはHüsker Düの”New Day Rising”をバックにステージへ登場した。”ソンゲントジユウ”のイントロが鳴らされるとフロアからはすかさず歓声と拍手が返ってきて、「どう転んだって俺は俺」のサビから、吉野寿(Gt/Vo)の叫びとともにフロアからも盛大なシンガロングが沸き起こる。「極東最前線」ならではの光景に胸が熱くなる。

2曲目の前には吉野が「俺の歌詞カード」と言って大きく印刷された絵を掲げ、”一切合切太陽みたいに輝く”が演奏された。

紙やタブレットに表示された歌詞を見ながら歌うアーティストはよく見かけるが、歌詞を絵に描いて思い出すという吉野ならではのやり方が面白い。鮮やかにドライブする”沸点36℃”から、”東京”へ。”一切合切太陽みたいに輝く”も”東京”も久しぶりにライブで披露された曲であるが、村岡ゆか(Ba)のコーラスが効いていて、楽曲が深みと華やかさを携えてアップデートされていた。

吉野はゲストのNITRODAYに感謝を述べた。「自分が20歳だったころ、どうしてたかなと思い出しましたけれども、とてもじゃないけどここではお話できないような人間でしたよ。もちろん音楽やってましたけども、すごい前、言いたくないほど前のことなので忘れました」と語りながら、初めてスキンヘッドにしたのも、eastern youthを結成したのも20歳の時だったと思い出していく。

「20歳の時に作った曲は本日はもうないです。忘却の彼方。25歳くらいの時に作った曲かな? っていうのをやります」

始まったのは”月影”。続く”男子畢生危機一髪”の2曲で、フロアは掲げられた無数の拳とシンガロングに彩られた。2年半ぶりに演奏された”未ダ未ダヨ”は村岡と田森篤哉(Dr)のコンビネーションも表情豊か、かつスリリングに展開していく。最近よく演奏されている”浮き雲”はダイナミックな響きが痛快。”月影”以降5曲一気に演奏された流れが圧巻だったからこそ、”青すぎる空”のラストの「いずれ暮らしの果てに散る」の吉野の独唱とともに訪れた静寂が一層染みた。

「言うまでもなく、私、生き物です。OK GoogleでもHey SiriでもAlexaでもない」と語り始めた吉野。生き物であるゆえに、今に限らず20歳の頃から突然声が出なくなったりすることがあるという。

「だから『ボイトレに行きなさい』……行きませんよ? そういうことで歌ってるわけじゃない。要するに、今日の歌を歌えばいいんです。(声が)出ようが出まいが、今日の歌を。20歳の時は20歳の歌を歌っていましたよ、私は。20歳の時は51歳の歌を歌っていませんでしたよ」

歌の技術的な問題解消や上達が目的ではなく、一回一回、「今日の歌」を歌う行為そのものに命をかけて30年以上歩んできたからこその言葉にフロアが沸く。さらに吉野はAIではなく生きている人間だからこそ間違うのだと続ける。

「いいんですよ間違ったって、生きてる間だもん。死んだら間違えられませんよ。眠りっぱなし」

との言葉を残して始まった、”テレビ塔”。曲がはらんだ無常観と、冬を迎えたから今だからこそ「もうすぐ雪が降る」の歌詞が胸に迫る。そして”踵鳴る”、”夜明けの歌”、本編ラストの”街の底”でさらなるクライマックスが到来した。観客のシンガロングはいっそう大きく響き、”街の底”のイントロではリズムと息のあった合いの手がフロアから起こる。いつにも増した勢いの良さに、吉野がちょっと苦笑いしているようにも見えた。

3人がステージに再び登場して、村岡が語る。

「今日のライブは私がこのバンドに入ってから99回目で、沢山やったなと思って嬉しいです」

おお〜っ! とどよめくフロアに村岡は「これからも頑張ります」と応える。加入以来、MCのたびに「頑張ります」と言い続けて、有言実行の姿勢で99回目のライブを迎えた村岡へ大きな拍手が向けられた。

この日、5月9日(土)に名古屋APPOLO BASE、10日(日)に大阪・十三 246 Livehouse GABUでのワンマンライブの開催が決定した旨と、16日(土)、渋谷クラブクアトロで開催される「極東最前線」のゲストが99年、00年に続く、3度目かつ待望の「極東最前線」への登場となるNUMBER GIRLであることが発表された。会場で先行発売されたチケットは、当然開演前にソールドアウト。ギターを爪弾きながら吉野が「次回の極東の話はしません」と言うと、いつだって「次回の極東の話」などしない吉野のあえての言葉にフロアは沸き立つ。

アンコールの”東京快晴摂氏零度”はしみじみと響き、ラストで「あばよ」と小さく呟く吉野のシルエットがスポットライトに浮かび上がった瞬間まで、完璧な美しさをたたえていた。ダブルアンコールで再々登場した際はフロアから口々に田森へ声援が飛び、田森が手を挙げて応える場面もあった。吉野は改めてNITRODAYにお礼を述べ、「20歳のバンドとやるのは20歳以来です」と言う。

「年齢、本当関係ないと思うよ。関係ありますよ、若い方がいい。元気だし。でも関係ないですね。自分の立ってるところからぶっ放せばいいんですよ。誰でも、何歳でも。そりゃ音楽にかかわらずそうですもんね。みんな生きてりゃそうするしかねえもんな」

同意の拍手がフロアを満たす。いつもひとりなので喋る機会を与えられると嬉しくてつい喋ってしまうが、酒場では喋りかけてほしくないと言う吉野。「間に合ってます、ひとりで。十分輝いてます、ひとりでも。余裕、素晴らしい」とユーモアある口調で一言語るたびにフロアから笑いが起こり、そのまま”素晴らしい世界”へ。「今年もこの日が迎えられた」という年末の極東最前線特有のあたたかな雰囲気のなか、イントロはリズムに乗って観客の手拍子が響く。2019年の「極東最前線」、そしてeastern youthの「今日の歌」を締めくくる力の限りの演奏が終われば、惜しみない満場の拍手が吉野、村岡、田森へ向けられたのだった。

<SET LIST>
01.ソンゲントジユウ
02.一切合切太陽みたいに輝く
03.沸点36℃
04.東京
05.月影
06.男子畢生危機一髪
07.未ダ未ダヨ
08.浮き雲
09.青すぎる空
10.テレビ塔
11.踵鳴る
12.夜明けの歌
13.街の底

En.1 東京快晴摂氏零度

En.2 素晴らしい世界

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『極東最前線~こんにちは名古屋・大阪~』※eastern youthワンマンLIVE
5月9日(土) 名古屋APPOLO BASE
5月10日(日) 十三 246 Livehouse GABU
Open 17:30 / Start 18:00 前売:¥4,000(ドリンク代別途)

『極東最前線~ボトムオブザ冷凍都市~』
5月16日(土) 渋谷 クラブクアトロ
Guest: NUMBER GIRL
Open 17:00 / Start 18:00 前売:¥4,000(ドリンク代別途)

【TICKET INFO】
<オフィシャル先行予約>
12月9日(月)12:00正午~12月15日(日)23:59 *抽選制

<プレイガイド最速先行予約>
12月16日(月)11:00~12月22日(日)23:59 *抽選制

受付URL: https://w.pia.jp/t/easternyouth-fareast/

<チケット一般発売>
1月11日(土)各プレイガイドにて一斉発売

詳細: https://smash-jpn.com/live/?id=3312


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Text by Keiko Hirakawa
Photo by Keiko Hirakawa