「いつかやりたいなと思っていた」川口潤監督が20年越しで実現した、eastern youth日比谷野音ライブのノーカット映像化を語る

『eastern youth 日比谷野外大音楽堂公演 DVD 2019.9.28』劇場公開記念 川口潤監督による舞台挨拶

3月4日(水)に迫った『eastern youth 日比谷野外大音楽堂公演 DVD 2019.9.28』のリリースにさきがけて、2月29日より東京・新宿のK’s cinemaにて同タイトルの劇場公開版の上映がスタートした。上映初日、川口潤監督による舞台挨拶が行われた。

新型コロナウイルスの感染拡大の懸念から、休館する都内の映画館もある状況下での上映。川口監督は開口一番、「今日(観客の入りが)渋いだろうなと思っていたので、正直、こんなに来てくれるとは思わなかった。ありがとうございます」と来場した観客へ感謝を述べた。

まず、川口監督がeastern youthの撮影にかかわるようになったいきさつが明かされた。1996年から2000年の間、スペースシャワーTVに勤務していた川口監督。1999年に『雲射抜ケ声』発売時のプロモーションについて当時のレコード会社、トイズファクトリーから相談を受けたという。

「トイズファクトリーとしてはeastern youthを売り出そうとしていたので、プロモーションしたいんだけど、本人たちがそういうモードのバンドじゃないので、どうしたもんですかねという相談を受けたのが1999年。eastern youthはスペースシャワーTVに入る前から当然知っていて、bloodthirsty butchersの『kocorono』のレコ発の取材で、吉野さんのソロの弾き語りを観たことがありました。曲は好きでしたが、その頃は思想的にちょっと怖い人たちなのかな? みたいなイメージがあったので、eastern youthのライブは観たことがなかったんですね」

その頃eastern youthはツアー中だったため、川口監督は直近の日程の秋田のライブへ向かった。

「『わかりました、じゃあ秋田行っちゃいましょう』みたいな感じで、スペースシャワーTVのスタッフを3人くらい連れて、ハイエースに乗って秋田まで行ったんです。でも何かインパクトを残さないとOK出ないかなと思って、あえて紺色のハイエースを借りて、美術部さんに白いeastern youthのロゴのステッカーみたいなのをドーンと作ってもらって。eastern youthのツアーバスみたいな感じの車で行ったんですよね。それを本人たちが『すごい車が秋田で走ってるらしいよ』って面白がってくれて。そのころの吉野さんってまだ『メディアには簡単にはなびかねえよ?』みたいな感じバリバリだったんですけど、車が旅をするちょっと変わった番組を作って、ライブ映像を1曲か2曲使わせてもらって、『こういう形だったらいいよ』ってOKが出て。その辺からですね、関係ができ始めたのは」

その年の年末にはレコード会社経由でeastern youthのライブ撮影のオファーがあり、翌年にはバンドから「今度映像作品(DVD『その残像と残響音』)を出そうと思っているから、川口君一緒にやりませんか」と声がかかった。

「それまでeastern youthは僕ではなく井上哲央さんという方がPVやライブを撮っていたので、僕としてはとうとう来たか! みたいな感じ。変わった番組を作ったのを気に入ってくれたのか、すごい嬉しくて。そこから関係が密になっていって、今に至るという感じですね」

以来20年間、川口監督はeastern youthのライブを撮影し続けてきた。

「ひとつのライブをまるまるノーカットで作品にするって、20年間の中で1回もなかったんですね。いつかやりたいな、やりたいな、と思ってたんですけど、そういうことに全く興味がない人たちなので、なかなか機会がありませんでした。野音のタイミングで遠回しに本人たちがどんな意向か聞いてもらいましたが、しょっぱい感じのリアクションでした。僕も当日予定が入っていたので行けるか微妙だったんですけど、吉野さんに『撮らないんですか』って聞いたら、『川口君来れないんでしょ?』『いやいや、形にするんだったら行きますよ』『じゃあやってみましょう』みたいな感じになりました」

「20年かかって、ようやくライブをノーカット版でDVDに収録できました。劇場公開版の方は、DVDがあまりにも長くなってしまったので『短くしてください』と言われまして、泣く泣く短くしました。でもそのかわりのご褒美というかたちで、二十何年間映像作品を作っていて初めてなんですが、劇場だけ5.1chで上映していただけるということで、価値のある上映になりました」

「DVDはノーカットと言いながら、SEはいろいろ権利関係があったので、最後の方はちょっと使えなかったんです。まあそれはちょっと面白いギミックを入れたりしているんで、3月4日に発売されるDVDを買っていただいて、劇場公開版といろいろ見比べて楽しんでください」

川口監督は最後に「みなさんの口コミだけが頼りなので、よろしくお願いします!」と語り、会場からのこの後上映される劇場公開版への期待に満ちた拍手とともに、舞台挨拶が終了した。

劇場公開版では5.1chでの上映によって、日比谷野音のライブが臨場感と迫力に満ちた映像と音響でよみがえる。あの日の空気、テンション、渾身の演奏が完全収録されたDVDと合わせて、劇場でも体験しておきたい。新宿・K’s cinemaでの上映は3月13日(金)まで。3月7日(土)21:00の上映回にはeastern youthの吉野寿(Gt/Vo)、村岡ゆか(Ba)の舞台挨拶が予定されている。

【劇場公開版『eastern youth 日比谷野外大音楽堂公演 2019.9.28』上映】
上映時間:105分 一般・学生¥1,500 / シニア¥1,000
※詳しくは各公式サイトをご覧ください。

[札幌] KLUB COUNTER ACTION ※終了
上映期間:2月16日(日)~2月17日(月)
https://twitter.com/kcasapporo

[東京] 新宿K’s cinema
上映期間:2月29日(土)~3月20日(金) ※期間延長
http://www.ks-cinema.com

[名古屋] 名古屋シネマテーク ※終了
上映期間:2月29日(土)~3月6日(金)
http://cineaste.jp

[青森]弘前Mag-Net
上映期間:3月2日(月)~3月3日(火) ※終了
http://www.mag-net.jp

[京都]京都みなみ会館
上映期間:3月6日(金)~3月12日(木) ※上映延期
http://kyoto-minamikaikan.jp/

[大阪]第七芸術劇場
上映期間:3月14日(土)~3月20日(金)
http://www.nanagei.com


『eastern youth 日比谷野外大音楽堂公演 DVD 2019.9.28』
発売日:2020年3月4日(水)
定価:4,500円+税
収録分数:本編約153min

収録曲:24曲(当日セットリスト全曲収録)
01 ソンゲントジユウ
02 夏の日の午後
03 砂塵の彼方へ
04 故郷
05 扉
06 いずこへ
07 雨曝しなら濡れるがいいさ
08 サンセットマン
09 踵鳴る
10 スローモーション
11 月影
12 青すぎる空
13 道端
14 裸足で行かざるを得ない
15 矯正視力O.六
16 ナニクソ節
17 街はふるさと
18 時計台の鐘
19 たとえばぼくが死んだら
20 荒野に針路を取れ
21 夜明けの歌
22 街の底
EN1 歌は夜空に消えてゆく
EN2 DON QUIJOTE

関連記事:eastern youth | 東京 日比谷野外音楽堂 | 2019.09.28 ライブレポート
鳴り止まないアンコール、その先へ
街の底からかき集め

eastern youth | 記事一覧
SMASHING MAG アーカイブス

Text by Keiko Hirakawa
Photo by Keiko Hirakawa