SXSW Music Festival 2018 ライブレポート Part 2

サウスバイの原点回帰を体感した1週間

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「世界のライヴミュージックのキャピトル(“Live Music Capital of the World”)」にして「オースティンならではのユニークさを大切に保とう(“Keep Austin Weird”)といったワクワク感満載のスローガンを意気揚々と掲げるアメリカはテキサス州の州都、オースティンに4年ぶりに帰ってきた!世界最大級の音楽見本市のサウスバイ(以下SXSW)を思いっきり楽しみに来たわけだ。

「SXSWとは?」やその沿革については前パブで触れたので、そちらを参照いただくとして、本レポートでは、現地でリムのインスタグラムを通して速報した内容に焦点を当ててお届けする。SXSWの1週間がいかに熱気にあふれていて、音楽バカにとって、どんだけたまらないイベントかってことを感じ取っていただければ幸い。

あらためて音楽の素晴らしさをありありと体感し、全身揺さぶられっぱなしの1週間だった。

SXSW Music Festival 2018 ライブレポート
サウスバイの原点回帰を体感した1週間 – パート1 / パート2
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ハインズ
SXSWで7回目のステージとなるハインズ。1871年に出来て、記念すべき145周年を迎えるヒストリカル・スクート・インにザ・プロディジーの”Stand Up”で踊りながら登場だ。
昨晩のホテル・ベガス・パティオでのライヴが楽し過ぎてまたしても観に来てしまった。「朝食のための音楽よ!(We’ll give you some music for breakfast!)と昨晩の荒々しさから一転してキュートで爽やかなステージ。ミドルテンポの曲に合わせてぴょこぴょこ飛び跳ねる姿が愛らしい。
ようやく彼女たちのSXSWでのステージも残り7回と折り返し地点に来たとのこと。来場者も思い残すことなく楽しまなきゃな!

Photo by Takafumi Miura

サンフラワー・ビーン
ニューヨークのブルックリン出身の3ピース・ロックバンド、サンフラワー・ビーンがお昼の無料パーティーに登場した。
紅一点のフロントウーマン、ジュリア・カミングはラメがきらめくスーツに、デヴィッド・ボウイの『アラジン・セイン』のような赤い稲妻が描かれたシルバーのブーツでキメている。
後8日でリリースされるという新譜『トゥエンティトゥー・イン・ブルー』からの曲を中心に披露していく。煌びやかなグラム調の曲もあれば、ブロンディのようなポップな曲も、ジョーン・ジェットのような気合の入った直球ロックンロールもあり、終始オーディエンスを飽きさせない。
10代と思しき女の子たちがジュリアの一挙手一投足をうっとりと見入ってシンガロングしている。ラストは彼女たちに応えるかのごとく、ジュリアが渾身のシャウトと腕を突き上げロックスター然としたパフォーマンスで締めくくった。

Photo by Takafumi Miura

ドクター・オクタゴン
今回のSXSWで一番観たかったライヴのひとつ。クール・キース率いるエログロサイファイプロジェクト、ドクター・オクタゴンの登場だ。
クール・キース、ダン・ジ・オートメーター、そしてDJキューバートの3人が並んでいるだけでジーンと来てしまう。
ダン・ジ・オートメーターが不穏な音を響かせ、”Octagon Octagon”からスタート。
やっぱりキューバートのスクラッチは神業だ。「Octagon Octagon」のイントーネーションをスクラッチで巧みに表現している。
ぶっといビートに痺れる”3000″、気味の悪さ満載の”Blue Flowers”や、女性の喘ぎ声のスクラッチが随所に入るエロい”Girl Let Me”などオクタゴン・クラシックを連発。クール・キースがキューバートの真似事でスクラッチをやったり、3人で仲良さそうに冗談を言い合ったり光景もあり、とても微笑ましい。
4月6日にリリースされる『Moosebumps』に収録予定の”Bear Witness IV”。1stに入っていた”Bear Witness”が20数年を経てロックに疾走するインスト曲に生まれ変わっている。これを耳にして、新生オクタゴンへの期待が更に高まった。

Photo by Takafumi Miura

ジェイド・バード
ロンドン出身のシンガーソングライター、ジェイド・バード(Jade Bird)が、SXSWオフィシャルベニューのモホークに登場。
お昼にアコースティックセットをチラ見してすごく良かったので、SXSWのオフィシャル公演を観に来た。今回はバンドセットだ。SXSW期間中、あちこちでライヴをしている彼女。噂を聞きつけてか、夜の公演一発目なのに客入りが多く、期待のほどがうかがえる。
ロンドン出身なのに、アメリカの南部なまりでしゃべるのが何とも可愛いジェイド。オーディエンスから最大級の笑顔が送られるのだ。キャッチーな佳曲”Lottery”でフロアを楽しく盛り上げる。バンドセットは音の彩りがあって空間を一気にあっためる。
ラストはアンコールに応えて、「後3分しかないの!」と急いで軽快なカントリー・ロックンロールを繰り出しステージを締めくくった。

Photo by Takafumi Miura

ザ・ストライプス
お馴染み、アイルランドの4人組ロックンロールバンド、ザ・ストライプスが4年ぶりにSXSWに登場。
“Mystery Girl”や”Blue Collar Jane”をはじめ、どの曲もオリジナルよりも倍速させたような勢いでガンガンに畳みかける。
気が触れたかのように頭を振り、ちょこまかと動き回るベースのピート・オハンロンが最高。実はメンバーの中で一番ミュージシャンシップが高い彼。演奏に余裕があってこそのパフォーマンスと言えるだろう。
ステージ前方のオーディエンスがイキイキしていて面白かった。若い女の子たちと、年配の方が半々という割合。隣にいた女の子二人組は「外で一緒に写真を撮ったの!」と見せてきて自慢してくるし、最前列にいた白髪のオヤジは「こいつらはリアルなロックンロールだ!」とか言っていた。ライヴ中はもうむちゃくちゃ盛り上がっていました。黄色い声援と、腕を組んで目を閉じて頷くという異なる盛り上がり方で(笑)。
ラストの”Scumbag City”まで約30分強。あっという間に駆け抜けた嵐のようなステージだった。

Photo by Takafumi Miura

ポスト・アニマル
シカゴのサイケデリック・ロックバンド、ポスト・アニマル(Post Animal)がSXSWオフィシャルベニューのチア・アップ・チャーリーズの屋外ステージに登場。
歪んだ音が随所にあるもののサイケ感は少なめといった印象。ブラック・ザバスの重たさを持ちつつ、速度を上げた土臭いロックンロールだ。ブラック・エンジェルスやザ・ブライト・ライト・ソーシャル・アワーなど優良サイケロックバンドを多く輩出しているオースティンは大好物の音だ。オーディエンスがめちゃめちゃ盛り上がるものだから、それに呼応して熱い演奏を繰り広げていた。

Photo by Takafumi Miura

トッド・ラングレン
トッド・ラングレン御大がSXSWのオフィシャルベニューにして例年ジャパン・ナイトの会場でもあるエリシアム(Elysium)に登場。
こんなにちっちゃいハコで大御所を観れるなんて何て幸せなんだろう。
バックバンドが機材をセットしはじめたので、思わずホッとしてしまう(笑)。
アルバム『ホワイト・ナイト』の”Come”からスタート。Tシャツは汗だらけで面持ちは疲れているがのっけから壮大に歌い上げる御大。続いてギターを手に”Rise”を披露。「新しいギターだから使い慣れてないんだ」と言いながらガッツリと引き倒す。ギターのコードを引っ掛けてマイクスタンドを倒しかけるシーンもあったが、最前列のお爺さんがすんでのところででキャッチし事なきを得た。
流石は現在進行形の男。『ホワイト・ナイト』から最も数多く曲をやり、その他もほとんどが2000年代のものだ。
ユートピアのカバー、”Our World”で本セットを締めくくったと思いきや、鳴り止まないアンコールに「バスの時間が…」とか言いながら戻ってきた。アンコールは、カーズの”Let the Good Times Roll”で会場のみんなで歌い騒ぎ、「もう帰ってくれ!笑」と冗談を言いながら、何とも楽しそうに会場を後にした。

Photo by Takafumi Miura

ラットボーイズ
シカゴのインディー・ロックバンド、ラットボーイズがSXSWのオフィシャル会場のチア・アップ・チャーリーズの室内ステージに登場した。バーの一角のようなとてもこじんまりとしたハコだ。当然のごとくフロアはパンパン。
ジュリア・ステイナーが皮肉たっぷりなMCを挟みながら、”Elvis is in the Freezer”といったパワーポップ調の佳曲を立て続けに繰り出していく。ジュリアが持つ毒っ気がノイズをもって迫ってくる。音源を聴いているだけではだけでは把握できない世界観だった。

Photo by Takafumi Miura

ギャング・オブ・ユース
オーストリア、シドニー出身の人気ロックバンド、ギャング・オブ・ユース(Gang of Youths)がSXSWのお昼のパーティーに登場。
音源からは想像できないほどのエネルギッシュでパワフルなパフォーマンスを繰り広げる。特にフロントマンのデイヴ・リーオーペプは客席に飛び込むは、あらん限りに頭を振りギターをかき鳴らしていた。かなりやんちゃな男と見受けられる。パーティー開始2発目のステージということもあり、一気に目を覚まさせられた。
たった4曲で終わってしまったが(基本、お昼のパーティーのセットリストは少なめだなのだ)、オーディエンスに強烈なインパクトを残したことだろう。

Photo by Takafumi Miura

ペール・ウェイヴス
今年のサマソニへの出演が決定している、マンチェスターのペール・ウェイヴスがアパレルメーカーのアーバン・アウトフィッターズが主催するお昼の無料パーティーに出演した。
オーディエンスはフロントウーマンのヘザー・バロン・グレイシーがお目当ての若い女の子が圧倒的に多い。
所属レーベル仲間のザ・1975直系のポップでダンサブルな音に大満足。彼らの爽やかな音は夏にこそ聴きたい。サマソニで再会するのが楽しみだ。

Photo by Takafumi Miura

スーパーオーガニズム
今年のフジロックへの出演が決定しているスーパーオーガニズムがピッチフォークが主催するパーティーに登場。
インターネットを介して繋がったという多国籍バンドだ。
煌びやかなサウンドでダンサブルに盛り上げる。各メンバーが何とも楽しそうに演奏している。ステージという一期一会を思い切り楽しむ姿勢が見て取れ、好感を持てる。
終演後、リード・ボーカルを務める日本人のオロノ・ノグチさんに挨拶しに行ったのだが、フジロックに参加できることに心底興奮しているようだった。苗場のステージも要チェックだ。

Photo by Takafumi Miura

ピーランダー・ゼット
世界最高峰のにぎやかしバンド、ピーランダー・ゼット。今年のSXSWにおけるラスト・ステージをキャッチした。これを観ずには帰国できませんから!
地元のお仲間バンド、ジ・オクトパス・プロジェクト(彼らのライヴがこれまた最高でした!)主催の昼間のパーティーに登場だ。徹頭徹尾、十八番のご機嫌なパンク・チューンを次々と繰り出し、集まったファンの笑顔を引き出しまくる。
中盤以降は彼らの真骨頂が炸裂。オーディエンスにチープな打楽器を配り、やんややんやの盛り上がりの中、ファンと腕組みグルグルダンスに、ヒューマンボーリング、ピーランダー・イエローとピーランダー・パープルのじゃれあいプロレスなどなど、”ザ・ピーランダー”なパフォーマンスをこれでもかと披露。ラストはイエローが駆け上がった2階席からダイブし、オーディエンスにステージまで輸送されるという、ピーランダーのライヴと言えばこれでしょ!なドンピシャなステージを繰り広げてくれた。
このバンドのライヴはこんな陳腐な言葉では決して伝わらない。ぜひその目で目撃し、体感してほしい。
いよいよ来月リリースされるニュー・アルバム『Go Pz Go』を引っ提げ、今後どんなお楽しみを企てているのか、ますます目が離せない!

Photo by Takafumi Miura

リンゴ・デススター
ピーランダー・ゼットのライヴのすぐ後に会場であるモホークのインドア・ステージに登場したのは、地元オースティンを拠点に活動するネオ・シューゲイザーバンドのリンゴ・デススターだ。
ギャグのような名前だが、ジーザス・アンド・メリーチェインや90sオリジナル・シューゲイザーやドローンといったキーワードにピンとくる方はきっとお眼鏡に叶うはずのバンドだ。
2011年に日本で観て以来の久しぶりのライヴだったが、”So High”をはじめ、変わらぬ甘美な歌声とノイズにまみれた音に酔いしれる。そして、ベース・ボーカルのアレックスの変わらぬ美しさにもついつい顔が緩んでしまった。
こんなあらゆる先人の影響を吸収しアップデートしたバンドもオースティンで活動している。あらためて、地元オースティンのバンド勢の層の厚さを思い知った。

Photo by Takafumi Miura

SXSW Music Festival 2018 ライブレポート
サウスバイの原点回帰を体感した1週間 – パート1 / パート2

Text by Takafumi Miura
Photo by Takafumi Miura