【サマソニ2023/ソニマニ総括 vol.1】酷暑の中でも楽しめた「普通のフェス」

自分は東京1日目のみの参加。11時過ぎに幕張メッセに着いて、ブラーが終わった21時過ぎにマリンスタジアムを後にした。

昨年は、女性アーティストの活躍でジェンダーについて考えさせられることが多かった。しかし、今年は自分の選択もあるけれども、普通に楽しいフェスだった。フェスのオーガナイザーは予算や時間などの制約の中でアーティストをキュレーションするのだけど、参加者はそれを受けて、自分の目と耳と足を使ってフェスを構成していく。フェスの感想を読んでいると、自分と同じフェスにいっているのかと思うくらい別のものを観ているのに驚く。一緒にいく家族や友人でなければ全部同じものをみている人はほとんどいない。なので、今年は特にメッセージ性のない普通のフェスという感想は、自分の選択の結果でしかない、ということなのかもしれない。

会場のレイアウトや雰囲気は昨年までと大きく変わることはなかった。ただ、ここ数年はいってなかったビーチステージに久しぶりに足を運んで覗いてみると、(自分が観た過去のビーチステージと比べて)巨大なステージになっていたのに驚いたし、人がいっぱいいたのにも驚いたけど、星野源がでるステージなら、これくらいの規模でないとダメなんだろう。

メッセ内の飲食エリアには大きなLEDスクリーンが下がっていて、常時タイムテーブルやエリアマップが映しだされていた。飲食店はマリンスタジアム周りやメッセ内にもたくさんあり、エリア・時間帯を選べば、さほど並ばないところもあって充実しているように感じた。特に、ビーチステージ近くのビーチ森エリアにはキッチンカーと向かいにはベンチが並んでいて、ビーチステージの音を聴きながら休むことができた。このあたりだけ木々に囲まれたところだった。なかなかよい雰囲気だった。

今年はチケットもすぐ完売してどこも混雑していた。さらに今年は猛烈な暑さということもあり、日中にマリンスタジアムでおこなわれることについてネット上で議論がおこなわれた。時期を8月でなく6月や9月にする、日中の気温が暑くなる時間はライヴをおこなわない、アリーナでも無糖飲料を販売する、日除になるテントなどを設けるなどの対策が提案されて、そのうちいずれかは来年に生かされるだろうと思う。

開催時期をずらすのはプロ野球の試合との兼ね合いもあるので難しいところもあるし、そもそも全世界中でおこなわれる夏フェスとのスケジュール調整もあるので8月3週目の週末に固定されているほうがよいとは思われる。あとは、自分の身は自分で守るしかないという結論になる。自分が観たマリンスタジアムでのライヴは、全てスタンドからであった。太陽の角度をみながら日陰になるように座るところを探したし、水分補給などは意識的におこなった。コロナ禍が収まって声だしがOKになったけど、なるべく密集したところにはいかないとかの対策は引き続き心がけた。マスクをしている人はフジロックよりは多かったと感じたけど、今や圧倒的少数派。この暑さの屋外でマスクをするのは厳しい。

そうして楽しんだサマーソニックである。よかったのは、落日飛車 SUNSET ROLLERCOASTER、TWO DOOR CINEMA CLUB、Cornelius、BLURだった。台湾からのお客さんも多かった(周りで中国語話す人や、スマートフォンの画面の文字が中国語の人が多かった)落日飛車 SUNSET ROLLERCOASTERは、涼しげで心地よかった。ノスタルジーがオシャレとつながっている。

TWO DOOR CINEMA CLUBは北アイルランド出身で「北アイルランドのキラーズ」もしくは「邦楽ロックに近い洋楽バンド」といった趣で、疾走感あるギターサウンドにポップでメロディアスな歌が乗って小気味よかった。彼らの楽曲のクオリティの高さを感じた。

Corneliusは基本的にはここ数年のモードだけども、昨年からまたアップデートされたものをみせてくれた。YMOの”CUE”のカヴァーが今回素晴らしかったところで、エレクトロニカに寄せることなく、あくまでもインディー風味なギターサウンドでカヴァーしたことで、小山田がYMO晩年には一員であったことを自らの出自の音で表現しているのではないか。

Blurは予想以上にちゃんとしていて素晴らしかった。新しいアルバムからの曲も多かったけど、過去の名曲の連打で会場は盛り上がるし、デーモンとグレアムの仲もよさそうだし、Blurを好きでよかったと思わせるライヴだった。Blurが終わると楽しみにしていた花火は上がらず(なんとなく火薬の匂いはしたけど)、残念だった。しかし、マリンスタジアムから駅に向かう道で空をみるとたくさんのドローンが浮かんでいて、さまざまな形に変化していた。これが花火の代わりなのかな? と思った。翌日は花火が上がったようだけど。

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Text by Nobuyuki Ikeda
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